時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅳ 不変/普遍の造形 住友コレクション中国青銅器名品選


先に「HARIO Cafe」でお昼を頂く。実は少し早めだったので迷ったけど、正解だった…。


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中国青銅器の展覧会。
実は物凄く拝見するかを悩んだ展覧会だった。
東京国立博物館根津美術館松岡美術館で、中国青銅器は多少慣れてはいる。
が、そこまで詳しいかと言われると自信がない。
饕餮文にも親しみはある。いや、饕餮に馴染みがあるのは全然別理由な気がするが。

書き手が保有してるのはホワイトハート版だけど(ぼそ)
余談だが。
泉屋博古館(京都の本館の方)のtwitterの中の方とは気が合いそうです(お)書き手が保有してるのはX文庫版です(ぼそ)


あ、今回の展示物はほぼ泉屋博古館所蔵(1つだけ泉屋博古館東京の所蔵)。


ちなみに、泉屋博古館東京でこちらの展示を実施するということにより、港区の3館(残りは根津美術館松岡美術館)に青銅器が集結する、ということで、こんなイベントやってた。
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渋さでイカれてて大変いいなと(あ)


それはともかく、恐る恐るこんにちは。
で、展示会場着いて、作品リストを拝見して、驚く。
…大部分が写真OKだと…?
泉屋博古館東京は大部分が写真NGなことが多い(それでもホールだけOKにしてくれて、太っ腹だなあとか思ったりしていた)。
これは予想外。そして予定外。写真がOKなのであれば、青銅器の形を後々まで愛でられるじゃないか…!(え)
というか、普通に後で感想も書きやすいのよ。本当にありがたい。
というわけで、写真をがっつりと。青銅器をローアングルで撮影する変態がここに(語弊)(下の方の文様撮りたかっただけ)

あ。中国の青銅器なので、普通に変換できない漢字が出てくる。そこはカタカナで書く方向で。


まずはホールにどどんと鎮座しているのが「キ神鼓」。
「キ」は世界最古の地理書と呼ばれている(ただし地理なのに架空っぽい)
山海経」(せんがいきょう)に出てくる怪物で、これを退治して
皮で太鼓を作った、という太鼓の形をした青銅器。
形としては大きな和太鼓みたいな。胴に角の生えた人面が描かれてるけど、
これは結構謎らしい。しかも結構ユーモラスな表情。
なお、作品名には英語名が振られていて、こちらにドラムと書かれていてちょっと反応したとか。
いやそりゃそうなんだけども。なんかね。
あ、そうそう、ホールには。

こんな格好いい幕もあったりして。


「1.神々の宴へようこそ」。
中国の青銅器は基本、祭祀用。
とはいえ色々な用途があるので、用途ごとに展示・解説されている。

まずは食器。
「鼎」(てい)は丸みのある胴体で、脚が三脚。肉の入ったスープを煮るためのもの。
「鼎」と同じように丸みのある胴体&三脚だけど、三脚が空洞になってるのが「鬲」(れき)。穀物を入れる。
「鬲」と同じ形の器の上に、寸胴の胴体が乗っているのが「ゲン」。下の「鬲」部分に水を入れて火をかけて、胴体との間に簀子を置いて、その上に食物を置いて蒸す器。
胴体に大き目の把手がついて底には高台がついている「キ」。穀物を入れる器だったらしいけれど、鈴がついているものもある(展示されていたものだと「饕餮文方座キ」がそう。中の鈴を鏡で見せてくれてた)のが祭祀用っぽい。
同じく穀物を盛る、角皿みたいな「ホ」。
同じく穀物を盛る、蓋と胴体を合わせるとつるんとした球体で、上下に脚がついてる(蓋をさかさまに置いても安定するようにとのこと)「敦」(たい)。
高坏状の「豆」(とう)。

次に酒器。形状から「当時は清酒じゃなくてどろっとした酒だったのでは(掬って飲むような形)」と記載があった。まあ、古代の酒だから、どぶろくみたいな感じだったのかなあ、とは。
非対称で装飾的な「爵」(しゃく)。底に煤がついていたから酒を温める器という説が有力だけど、本当にそのまま酒を注いで呑んでた可能性もあるらしく。
同じく酒を温める器とされる、「爵」よりは丸みを帯びて脚のついた鍋みたいな感じの「カ」。
酒や水を盛ったという、やかんというかポットのような胴体に脚がついた「カ」(1つ前のとは全然漢字が違う)。
同じく酒や水を盛った、普通に大きな壺の形をしている(装飾はゴテゴテ)「罍」(らい)。
「罍」より細い形の「尊」(そん)。「犧首方尊」、動物の頭を象った飾りがいっぱいついて可愛いな、と思ったけど、「犧首」だからこれって捧げられた動物の…(言うな)
扁平な円形の器「ホウ」。
色々な形をしているけど総じてそのまま「壺」(こ)。
丸みを帯びた胴体と蓋と大きな釣り手のある「ユウ」。
大きな把手と怪獣の形をした蓋がついてる、グレービーボートみたいな器の「ジコウ」。「ジ」が牛の形の化け物、「コウ」がその角で作った器の意味らしい。怪獣の形をしているから、総じて可愛い…。
ラッパのようなコップ型、「觚」(こ)。
丸みを帯びてちょっと胴がくびれた可愛らしい蓋つきの器「シ」。

水器は1つ(酒器の中でも水を入れたものとかもあったみたい)。
以前松岡美術館でも拝見した、グレービーボート状の「イ」。

でもって楽器。
日本で言うところの銅鐸みたいな釣鐘「鐘」(しょう)。
手に持ってカウベルのように打ち鳴らして使ったと想定される「鉦」(しょう)。書き手にとって、カウベルは手に持つよりドラムセットに組み込まれてるイメージになりつつあるが(おい)


「2.文様モチーフの謎」。
ここは文様のモチーフの切り口からの展示。「饕餮文」は宋時代についた呼び名で、本当はどう呼ばれていたか不明とか、いきなりここまでの勉強をひっくり返すような話も出てくるけど(え)
中国の「龍」がキメラ(角が鹿とか尾は蛇とか混ざってる生き物)なのは、確か東京国立博物館の解説でも拝見した記憶がある。
…というか。この章、とびっきり可愛い青銅器しかいないんだが…(あ)泉屋博古館饕餮は基本可愛いのが多いけれど、選りすぐりをここに集結させているような。
饕餮以外も可愛い。ぽっちゃりした鳥の形をした鳥文ユウとかゆるキャラじゃないか…。
で、今回はもしかしたら饕餮以上のアイドルかもしれないのが、鴟キョウ。キョウの字が出ないんだけど、鴟梟とも書くみたい。こちらの方が漢字は分かるかもしれない。フクロウとかミミズク。ずんぐり系鳥。一番ゆるキャラにすると可愛い系。
今回の展覧会のポスターにも描かれているのは「鴟キョウ尊」。
平面の図でも格好いいけど、これは実物を拝見した方がいいと思う。なんだこの可愛いもの…。


こちらの左側。右側は戈ユウ。この写真…素晴らしくずるい…。
ただ、この章の最後にあるのはゆるキャラじゃなく、何やら建物っぽいもの。「チ文方炉」。屋根の部分が取り外された建物の形をしていて、正面に門があって、門から火種を入れて、屋根の上に置かれた器の中の食べ物を温める形らしい。
使い方としてはなるほど、と思うのだが、門の横に門番と思しき人物が彫られている。細かいなあ、と思うのだけど、門番の脚が妙に短い。
古代の中国では、足切りの刑に遭った人間を門番にすることが多かったそうな。
…なんでいきなりそんなホラー…。


「3.古代からのメッセージ-金文-」。
青銅器には文字が刻まれてることが多く、そこに言及した展示。器の底に彫ってあったりとかするんだよね。
「ヒョウ羌鐘」はずらっと鐘(文面が正面に書かれていて分かりやすい)が並んでいて、ここにヒョウ羌という名の武官なのかな、功績がずらっと書いてあるという、貴重な資料でもあるものが。
後は鏡が多数展示されていた。


「4.中国青銅器 鑑賞の歴史」。
後世の人が青銅器をどう扱ってきたのか、という話。
宋時代に青銅器を模倣して(「倣古銅器」というのが流行したそうで)作成された「金銀錯獣形尊」。大小二対で作られてて、これがえらい可愛い。ちょっと丸い鹿のような犬のような獣の姿。光を上手く当てて、後ろにその形の影を壁に映してたのもいいなあ。
宋時代には青銅器の図録「宣和博古図録」も作られていた。
また、清時代の文人が箱と講釈をつけて鑑賞してきた、殷時代の青銅器「宰コウ角」とか。文面に紂王(殷の最後の王、「封神演義」でも有名ですな)の名前が出てくるらしい。それは貴重…。
で、「古銅象耳花入」みたいに、現時代に古代の青銅器を参考に作られたものが、日本に渡って茶道具に転化していたり。
後は、住友の青銅器コレクション第一号の「キ文筒形ユウ」とか、コロタイプ写真入りの青銅器図録「泉屋清賞」とか。


講堂では青銅器の構造を360度3D映像で見せてくれていたりした。
文章も声の解説もなし、ただ構造と、使い方も見せてくれていた。
分かり易くていいなあ。


なお、ミュージアムショップの入口には、この子が鎮座していた。


普段は泉屋博古館にいらっしゃるんだろうか、しきょうそんちゃん(ひらがなで書くと可愛いのずるい)。


というわけで、マニアそうで意外と可愛い可愛いだけ言ってて問題ない、でもマニアになるフックになりそうなコラム的な解説も展示していたりする、個人的にはとてもドツボな展覧会だった。
本当にもっと早く伺って、会期終わる前にブログ書いて少しは宣伝すべきだった…。
ちなみに、写真300枚以上撮ってた。予想外過ぎる…。


続く(続いちゃうの…?)