時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱@東京藝術大学大学美術館

museum.geidai.ac.jp

宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品が拝見できる、と聞いたら。
書き手、実は三の丸尚蔵館に行ったことがない。行きたいとは思っていたのだが、タイミングがどうも合わず。で、ただいま新施設移行で休館中ということで、実施してくれた模様。ありがたい。
ちなみに展示は三の丸尚蔵館の収蔵品だけじゃなくて、東京藝術大学所蔵もあるよ。
あ、ちょっと変わった前期と後期で、展示入替あるよ。

展覧会公式twitterが作品紹介してくれているので、詳細知りたい方はこちらで。
twitter.com

今回は3階から。

「序章 美の玉手箱を開けましょう」。
いきなり置かれている「菊蒔絵螺鈿棚」。なんか凄い豪華で眩しい…。メインは蒔絵(川之邊一朝「他」ってなっていたので、複数の方が制作に関わっているっぽい)なのだろうに、金具を海野勝珉が作成していたり。細部まで…。
この章、他には岡倉天心の「「日本美術史」講義ノート」とか、法隆寺金堂四天王像の拓本とか、金堂壁画のコロタイプ複製とか、実は資料文献が多いんだけどね。


「1章 文字からはじまる日本の美」。
文字が主、というか、経典とか文書とかになるので、もしかしたら地味な章かもしれない。
個人的には「紫紙金字法華経 巻第二」の紫地の紙が(紺地と比べると)柔らかい色をしていていいなあとか、伝・藤原行成「粘葉本和漢朗詠集」や伝・藤原公任「巻子本和漢朗詠集」の料紙もツボ。
伝・藤原公任「大色紙」も文字が芸術的な軸装で良いなあ…。


「2章 人と物語の共演」。
物語関連。縁起もあったりする。
伝・狩野永徳源氏物語図屏風」。狩野永徳っぽいらしいので伝、なのだけど。いや…美しいですな…。大和絵じゃないんだけど(桜の描き方は狩野派っぽいし)、大和絵の気品をなんか感じるんだよね…。素敵。
で、伝・ 土佐光則「源氏物語画帖」。こちらは完全に気品のある大和絵。描かれている和歌の料紙も美しい。眼福。
一方、鎌倉時代に描かれた「絵師草紙」、これが凄い現代の漫画っぽい顔の描き方で、ちょっとびっくりする。
ここは彫刻もいくつかあって。木彫の山崎朝雲賀茂競馬置物」は、馬の躍動感が物凄い格好いい。金工の海野勝珉「太平楽置物」は雅楽太平楽を舞う老人。細部に渡って凄く綺麗で。武装なんだけど、「戦えない武装」で、平和の象徴なんだよね…。


でもって地下2階へ。

「3章 生き物わくわく」。
動植物(空想の生き物も含む)題材。
部屋の入口に彫刻を置いてて、部屋全部は見られないように仕切りがあって。仕切りの中は、絵画を周囲に配置して、空間の中には様々な立体配置(彫刻とか工芸系)、という置き方。
部屋の入口のところの彫刻は「鼬」が可愛かったなあ。作者不明だけど、明治天皇御遺品だそうで。わかる。
絵画。
まずは酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」…書き手狙い撃ちかな(あ)ドツボ。
でもって横山大観「龍蛟躍四溟」。龍と蛟(みずち)の絵なのに迫力がある感じでなくて、むしろ表情が優しくて穏やか。こちら、寿ぐために描かれたものだそうで。
今回目玉の1つ、高橋由一「鮭」。有名絵ですなあ。個人的には鮭の皮の描き方が凄いなあ、と思う。


そしてこんなコラボでグッズ作ってたり。
で、工芸系。…え…これ…全体的に凄い作品多くないか…?
加納夏雄「百鶴図花瓶」は描く鶴の線がとてもシャープで格好いい。
板谷波山「葆光彩磁花鳥図花瓶」は安定の美しさ。
初代伊東陶山「上絵金彩蝶尽卵形合子」。細工は細かく、卵型なのが妙に可愛い。
牙彫の「羽箒と子犬」。牙彫にしてはやや大きい、でも他作品よりは小さめ、というサイズで、丁度いい感じ。円山派っぽい子犬が立体化していて可愛い。羽箒の羽の細工が非常に細かくてうわあああ、となる。
沼田一雅「牛と童」。牛の首の皺の寄り方のリアルさとか、牛の皮膚の触感を凄く感じるところとか。凄いなこれ…。
十二代酒井田柿右衛門白磁麒麟置物」。白磁麒麟が本当に凛々しい。白磁だからこそ。格好いい。
高村光雲矮鶏置物」。少々小ぶりの木彫の鶏2羽。…なんでこんな羽根がふくふくした感じに見えるのだろう…。リアルでもあるんだけど、それに加えて美しさとか可愛さを感じるのが凄い。


「4章 風景に心を寄せる」。
風景関連だけど…いきなり並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」が展示されていて、書き手がぶっ倒れているわけなのだが(あ)黒地の上に繊細な桜…。
ここは部屋半分が日本画で、半分が洋画(油絵)。
日本画は海北友松「浜松図屏風」「網干図屏風」。…海北友松ってかなり前衛的な気がしません?書き手だけ?ちょっと凄いよね…。安土桃山時代とかの絵師だよな…。
川合玉堂「雨後」はとても美しい。これだけ虹を綺麗に書ける日本画家もそういないよね…。
で、実は洋画の4枚の絵がとても素敵。
五姓田義松「ナイアガラ景図」(この時代でナイアガラ描いてるのも凄いことだが)、高橋由一栗子山隧道」、中村不折「淡煙」、和田英作「黄昏」…どれも素敵な風景画なんだが…おおお…。


個人的にはドツボな展覧会だった。
これは後期も行くんだろうなあ…。


なお、グッズ販売のところで、鮭のふりかけを買うかどうかで悩んだ書き手だった。
鮭のふりかけを展覧会グッズとして売る気持ちは買いたい(でも、味が分からないと購入するのが怖いんだよ、食品系…)。


続く。