時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

MOMATコレクション@東京国立近代美術館

www.momat.go.jp
勿論このまま常設行きますよ。


1室「ハイライト」。
だけど、「モデルたちの生誕・没後数十年」という小特集も。
解説にない辺りだと、橋本明治の独特な画風で描かれた「女優」は司葉子、生誕90年(御存命ですよ)だとか。
オスカー・ココシュカ「アルマ・マーラーの肖像」のアルマ・マーラー、グスタフ・マーラーの年の離れた妻だった方なんだね。グスタフ・マーラーの没後にオスカー・ココシュカと恋愛関係になったけど、別の人と結婚してとかいう…(しかもその後もう一度結婚している)。どうもファム・ファタル系の方っぽいですなあ…。
ハイライトとしては、平福百穂「荒磯」はなかなかダイナミックであった。波の飛沫に金使ってるのかな。
舟越桂も出ていた。今年はね。うん。


2室「明治時代の美術」。
五姓田芳柳「静舞」…凄いリアル…。軸に描いているし日本画ではあるんだが、技法は西洋のそれ。
狩野芳崖「獅子図」は、江戸までの日本画でもあるような題材だけど、獅子は本当に西洋ライオンである。
で、渡辺省亭の色彩もやばい「雪中鴛鴦之図」。…この並びは…ちょっと書き手の心ぎゅうっとされてますが…。
竹内栖鳳「飼われたる猿と兎」の毛並みの描き方が(栖鳳なので凄いけど)円山四条派っぽい…となってほっとするぐらいだ(え)
険しい線ながらも写実以上のものを感じる朝倉文雄「墓守」と、単純な線で作られているのに妙な存在感、そして力強い表情の竹内久一「達磨之図」、彫刻もどちらもいいなあ。


3室「開発される土地」。
都市化がテーマなんだけど、坂本繁二郎「三月頃の牧場」は都市化関係ないような…。まあありがたいけど。
中川一政「板橋風景」もまだ全然牧歌的な板橋の風景。
鄙びた風景ばかり選んでしまう書き手。


4室「夢想と自由と―谷中安規の世界」。
谷中安規は初めて拝見するだろうか。大分幻想的な作風の版画家である。貧困の中で生きた方だそうで、戦後すぐに餓死するというなかなか壮絶な方ではあるのだが。
感覚で好きな感じのものをいくつか。


5室「シュルレアリスム100年」。
アンドレ・ブルトンシュルレアリスム宣言」から100年なんだね。
ハンス(ジャン)・アルプはなんか分からないけど嫌いじゃないんだよね。
ジョアン・ミロ「絵画詩(おお!あの人やっちゃったのね)」は、うまいこと文字がデザインになってて格好良かったり。
イヴ・タンギー「聾者の耳」も凄いはっきりした絵で嫌いじゃない。
ジョセフ・コーネル「ウィーンパンの店」「無題(パルミジャニーノ)」は、アッサンブラージュという、立体版コラージュみたいな作品で、これが面白い。
日本だと、浅原清隆「郷愁」、浜田浜雄「ユバス」辺りが個人的には好きかも。しかし浅原清隆も戦争に消えた方なんだな…。


6室「「相手」がいる」。
6室は太平洋戦争の戦争画関連だが、今回は相手の「「欧米列強」の敗北の場面」を描いている作品を集めている。
実ははにどぐ展の方にも、宮本三郎のそういう絵を葉書にしたものが出ていて(切手の部分が埴輪)、図柄もよく似ている「シンガポール陥落」も出ていた。
向井潤吉とか小磯良平とか、上手いけど困っちゃうやつである…。


7室「プレイバック「日米抽象美術展」」
1955年の「日米抽象美術展」からの作品。
出てた作品が結構好きだったなあ。単純かされたトルソみたいな木彫・植木茂「作品」、以前は10室で拝見したかな、四角が並ぶハンス・リヒター「色のオーケストレーション」、暖色の四角が重なるジョセフ・アルバース「正方形賛歌:持たれた」。
これが「日米抽象美術展」当時での展示と同じように展示されていて、なかなか良かった。


8室「生誕100年 芥川(間所)紗織」。
芥川(間所)紗織、はにどく展にも出ていた。生誕100年もあるんだろうけど。
とにかく独特な絵柄である…。
ただ、1960年ぐらいに作風が変わってて、その時の色の少ない抽象画は嫌いじゃない。そのすぐ後に病死されてしまったので、存命だったらどんな作品作られたんだろうなあ…とは。
奈良原一高の、戦中の砲兵工廠を戦後に撮影した「「無国籍地」より」のシリーズも出ていた。


9室は写真、清野賀子特集。
割と平凡な(と言ったら失礼か)風景を淡々と撮られているので、その中でも気に入った辺りを。


10室は前半と後半で異なる企画。
前半は「アール・デコの精華」。
アール・デコということでルネ・ラリック展示多め。
それに影響を受けた日本人作家等。内藤春治の作品はモダンで素敵だった。
後半は「歴史の描き方」。所謂、歴史画。
川合玉堂「小松内府図」はなんかこう、色使いが凄く綺麗なんだよねえ。
松岡映丘「屋島義経」も鎧が美しい。ちなみに松岡映丘は鎧を着た自分をモデルに描いたとか。まさかのコスプレ(違)いやそこまでこだわったってことで。
吉川霊華「離騒」は線画が綺麗で、小山栄達「謙信公」は影のように描いている武者が格好いい…。
平山郁夫「高燿る藤原京の大殿」は遺跡のように藤原京を描いているのだけど、その佇まいと、周囲の緑の深さがたまらない(あと、平山郁夫が写真OKなのは本当に珍しい。著作権的にNGなことが多いのだが)。
で、下村観山「大原御幸」の絵巻…好きすぎて写真の数がえらいことに…。
いやあ、眼福。


11室「Lines and Grid」。
直線で作られている作品は結構好きだなあ。アン・トゥルイット「無題」とか、荒川修作「彫刻する No.1」とか。
と言いつつ、杉浦邦恵「Botanicus 17」は粘菌みたいでこれはこれで。


12室「ドローイングの生命」。
12室は現代アート的な感じなんだが、そこから分岐している小部屋の方では、1つ前の時代のドローイングというよりは「デッサン」がある。
戸張孤雁とか土田麦僊とか…めっちゃ上手いんですよねえ…。
古賀春江のスケッチブックも綺麗だし。川端龍子のスケッチブックもあって個人的にニヤニヤ。
一方、大きな部屋の現代アートなドローイングの方。
坂上チユキがレースのような不思議で綺麗な絵を描かれる、と思ったら、所謂アウトサイダー・アートに分類される方だそうで。なるほど…。
後は個人的に何故か好きなアンリ・ミショーが数点。


ギャラリー4だが、今回は「フェミニズムと映像表現」。
ええと…テーマが苦手な上に、表現としても苦手な(どうしても時間を喰うんですよね…)映像ときておりましてですな…。
すみません、ここはスルーで。


やっぱり充実する展示でございました。