時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

マリー・ローランサンとモード@Bunkamura ザ・ミュージアム

平日休みをゲットしたので、平日でないと近づくのが苦手な場所へ。
本当に渋谷(というか人混み)苦手過ぎる…。

Bunkamura ザ・ミュージアムの「この場所としては」ラストの開催。
一応、別の場所(渋谷ヒカリエ)でBunkamura ザ・ミュージアム主催で展覧会の開催はあるらしいよ。


今年はマリー・ローランサン生誕150年ということで、展覧会も複数予定されてる。
ただ、Bunkamura ザ・ミュージアムの切り口はちょっと変わっている。
マリー・ローランサンと「モード」。
当時の時代の流行を作り、また流行に反映されたローランサン、というところかな。


「1.レザネ・フォルのパリ」。
レザネ・フォル=フランス語で「狂乱の時代」。
英語だと「ローリング・トゥエンティーズ」=「狂騒の20年代」。1920年代、第一次世界大戦後の混乱期であり、経済が飛躍的に発展した時期、という意味。
完全に余談なんだけど、凄いタイムリーにそんな話されてびっくりした…。エンタメが発展したのも経済の発展が元なんだよなあ…。
news.j-wave.co.jp
閑話休題
ローランサンはこの頃、社交界の寵児レベルの人気作家。そのため、社交界で付き合いのある男爵夫人の絵画や、伯爵の舞踏会で上演されるバレエのポスターやプログラムの絵等も手掛けている。
で、実はここに「マドモアゼル・シャネルの肖像」が。横浜美術館のオランジェリー美術館展で拝見したアレ。
morina0321-2.hatenablog.com
ローランサンの社交中の写真が載ってて、そこでもシャネルのドレスは多用された様子。
あ、ローランサンはこの一件でシャネル自身とは少々仲が悪くなったっぽいのだが、ローランサン自身もシャネルのお店には結構通って服飾品もかなり購入されていた様子。
マン・レイが撮影したシャネルの服を着た社交界の女性の映像もありつつ。しかし…1920年代だからなのか…その…皆様体形はおおらかだなあって…(婉曲)自分を省みろ、という言葉になりそうだが、ちゃんとこれも理由があるんですよ念のため。


「2.越境するアート」。
時代はちょっと広がって、1910年代前半から、20年代
まずはローランサン。1910年代前半の初期の絵画から、20年代の「狂乱の時代」にバレエの舞台装飾&衣装を手掛け、更に装飾美術を手掛けることになるまで。
ローランサン、初期はキュビズムの影響を受けていて、この頃は輪郭線がある描き方をしている。
で、有名になってから、セルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュスの「牝鹿」の舞台装飾と衣装を手掛ける。
バレエは全然詳しくないので、ダイジェスト映像があってイメージが掴みやすかったのは良かった…とはいえ、「牝鹿」って筋らしい筋はないみたいなんだけど。
キラキラした若い男女が戯れてるだけの筋なの?そうなの?ローランサンの世界にはあってるとは思うけれど。ひらひらしてた。
で、その後に装飾美術に関わることに。
ちなみにローランサンの自宅の装飾はデザインに本人が関わっていて、実際の装飾はアンドレ・グルーという装飾家が携わっているのだが、アンドレ・グルーの妻であるニコル・グルーとローランサンが友人で(実際は友人よりもっと親密な関係だったみたいだけど)ニコル・グルーの肖像画やモデルにした絵が展示されていたりもしている。

一方、シャネルはバレエ・リュスを援助していて、「青列車」の衣装を担当している。
こちらも映像あり。ヴァカンス地の海水浴場が舞台らしく、水着(1920年代の水着ですな)とか、テニスウェアで踊る。こちらも筋がないが、なんだかとてもスポーティ。衣装も踊りも。書き手の別ブログで触れてもおかしくないような。
書き手は高級ブランド品に全く縁がない(正直あまり興味もなく…(あ))ので存じ上げなかったのだが、シャネルって割とデザインが現代の目で見たら「普通の服」に見えるんだよね。


「3.モダンガールの登場」。
この章の中心はモード。

まず1910年代のデザイナー・ポール・ポワレの話から始まる。
実は上述のニコル・グルーは、ポール・ポワレの妹(旧姓表記だとニコル・ポワレ)。
ポール・ポワレオートクチュールの香水を初めて作成したデザイナーで、そちらでも有名なのだが、服飾の方では、「コルセットからの開放」を行っている。
それまではコルセットで締め付けた上でドレスを着るスタイルだったんだよね。そういえばそうだな…。指摘されて気づいたよ。ちなみにコルセットなしの衣服として、東洋風の衣服を参考にしているのだとか。

で、1920年代からはシャネルが台頭。
台頭の前に、始まりのシャネルの帽子店(1910年代前半)の様子のリトグラフ風刺画の展示、でもってローランサンの絵画の「帽子の女」にスポットを当てた展示がある。
で、1920年代「モダンガールの登場」。シャネルのシンプルな、膝下ぐらいの(当時としては)短いスカート。短い髪で活動的なモダンガールの女性のスタイル。1910年代のコルセットからの開放から、更にスタイルの開放を行っているんだよね。だから「普通の服」っぽい。
なお、服でスタイルを作ることをしないので、上述の通り「体形はおおらか」なのがとても出やすいデザインでもある。

さて。1930年代になると「フェミニンへの回帰」が発生する。スカートがまた長めの流行に戻っている。モードは循環するよね本当に…。とはいえ、もうコルセットはつけないわけだが。
マドレーヌ・ヴィオネ(実はポール・ポワレと同時期に出てきたデザイナーで、こちらも体のラインに合わせた服をデザインしていた方)「イブニングドレス」、個人的には好みだったなあ。
シャネルは少々モードからは外れるのかな。でも、当時のマン・レイが撮影したシャネルの肖像はとても美しい…。

一方、1930年代のローランサンなのだが、画風がここで少し変わる。輪郭はないまま、1920年代の淡い色彩が、明るいはっきりした色彩に変わる。
ローランサン、画風の変わり方が結構分かりやすいな…。
「ばらの女」は明るさに少し幻想がかかる形で、とても素敵。


「エピローグ:蘇るモード」。
最後はいきなり時間が10年前、2011年に。
シャネルのこの年のコレクションが、淡いピンクが主体。そう、まるでローランサンの絵画の色のような。やっぱりモードは回帰するもの、のようで。
シャネルがこの年に作成したドレスと、その約90年前に描かれたローランサンの絵画が並んで展示されている。
そしてこちらは、写真がOK。写真の方が色味は分かりやすいよね、ということで。


ちなみに絵画のモデルはニコル・グルーと、ニコル・グルーの二人の娘さん。
こちらでは当時のコレクションの映像も出ていた(そして人だかりが)。


この切り口はこの切り口で、結構面白かったなあ。
最近、衣装関係の展示会も多かったからかもしれない。


続く。