時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

やっぱり、京都が好き~栖鳳、松園ら京を愛した画家たち@福田美術館

2泊3日の旅行、3日間中2日雨。
まあ、行先によっては問題ない。
というわけで、地下鉄&嵐電1日チケットを購入して、嵐山へ。
fukuda-art-museum.jp


嵐山の駅とか、駅周辺の店はかなりの混雑…だったのだが。
福田美術館、ひとが全然いなくてびっくりした…。
morina0321-2.hatenablog.com
開館記念の時は相当入ってたのもあって。
素敵な絵が多くて、写真OKで、いい美術館だけどなあ…。

1階の展示室1。
いきなりお出迎えする竹内栖鳳の数々。流石、展覧会の副題に名前があるだけのことはある。
「春の海」「水郷雨餘」「水風白鷺」と湿気たっぷりの絵と、「春日野」の見返り美人的な鹿に、「金獅図」の何とも言えぬ存在感の獅子。
そして屏風モノ、こちらも湿気たっぷりの「雨景・雪景図屏風」。
外の天気が雨模様ということもあって、なんともいい雰囲気である(外の天気は偶然だけど)。

そして不意打ちのように山元春挙が。「成道出山之図」、こちらは修行の山から釈迦が降りてくる図なのだけど、モティーフといい、若い頃の絵かな、と。
そしてその横に伊藤若冲「小槌に宝珠図」。大胆にデフォルメしていて、妙に可愛らしい。個人的には若冲はこういう絵の方が好きなんだよね…。
でもってその近くに、岸駒「花鳥図屏風」。六曲一双の屏風に、1つの扇に3つずつ、花鳥のモティーフを規則正しく描いているので、一隻に(3×六曲なので6=)18モティーフ、左右合わせて36モティーフ。花は色々描いているのだけど、鳥は様々な色の「鳳凰」という、一風変わった屏風。でも、とても華やかでめでたい感じ。18種類のうちの推し鳳凰を探したくなる(推し鳳凰とは)。
あと、こちらは写真NGだったけれど、小野竹喬「松径」。松の木が朦朧体風の描き方で、なんだか良かった。

後半には上村松園。こちらも展覧会の副題。
「人形遣之図」は前回拝見してはいるけれど、「しぐれ」「美人浴後図」「初雪」…ありがとうございました(急にお礼を言いだす)。
お客さんが少ないのをいいことに、細かく表装も拝見。松園の表装は素敵だからなあ…。
「美人浴後図」の中回しの柄が素敵だったり、「人形遣之図」は、中回しと天の部分の柄が一緒で(紫地の鹿の子絞りっぽい感じ)、その区切りが…赤い糸?っぽい。そして風帯も別の布を使ってるとかでなく、赤い糸で風帯の形に区切ってあるだけで、柄が全部一緒。これはちょっと面白い…。


2階。展示室2。
こちらは京都の景色がテーマになっている。
まず目を奪われたのは平山郁夫。写真NGだったのだけど、京都の寺社仏閣に桂離宮、計4点。何かはわからないけれど、なんだか凄く「格好いい」と思わせる絵ばかりだった。「桂離宮」は庭が有名なのに庭全然描いてない、のに建物が格好いい…。
更にやはり写真NGの小野竹喬「比叡」。空は朝焼け?夕焼け?とにかく凄い色。インパクトが強い。
その横には横山大観「水国之夜」に「秋色」。「水国之夜」は街中だし、「秋色」は渓谷(嵐山?)の絵で全然違うんだけど、どちらもそれぞれいい味で結構好み。
冨田渓仙「風師雷伯」は風神雷神の図、なんだけど…ゆるい…。
池田遙邨「嵐山清秋」「嵐山薫風」は嵐山の絵ということで。なんというか、水面の波とか松とか、独自の描き方をされている。ちょっともこっとした感じというか。
川村曼舟は嵐山に住んでいた画家で、「渓山春靄 洛西嵐山」は靄に霞む木々、「嵯峨野の月」は福田美術館にも縁がある「小督」(福田美術館の傍に、小督が身を寄せた家の跡とされる小督塚がある)の1シーン。綺麗なやまと絵、という感じが素敵。
ちなみに川村曼舟は山元春挙の弟子。春挙の影響は…そこまで感じないけど。


でもって奥の展示室3。
行ってみたら…お菓子の箱が並んでいた。
京都の和菓子のお店の包装紙、画家のデザインが多いの。
とらやは富岡鉄斎
www.toraya-group.co.jp
二條若狭屋は掛紙と包装紙が神坂雪佳、紙袋が山元春挙…おっと。
www.kyogashi.info
二條若狭屋は、それぞれのお菓子のパッケージで色々な画家をお使いになってるっぽい。
というか、何も解説に書かれてなかったけれど、包装紙の文字「不折書」って書いてあるね(不折=中村不折。不折は洋画家、書家でもあるそうな)。
個人的にも縁がある鶴屋吉信も、富岡鉄斎
節分に厄除け招福 福ハ内shop.tsuruyayoshinobu.jp


でもこの絵は春挙だよね(あ)
長久堂の掛紙は菊池契月。
末富の包装紙は池田遥邨。「末富ブルー」と呼ぶそうで。
www.kyoto-suetomi.com
くりやは山元春挙
www.kuriya.biz
…春挙、和菓子好きだったんだろうか。お酒は好きだったらしいのだが。
ううむ、和菓子も気になれば包みも気になる…。
ちなみにくりやのこちらのサイトは桂にある本家で、のれん分けしたお店が丸太町にある(こちらも包装紙は同じ、展示されていた包装紙は丸太町の方だった)のだけど、こちらは先日火事に遭われてしまったそうで休業中…。再建できますよう。

で、展示室3は和菓子の包装紙だけでなく、日本画がいくつか。
伊藤小坡「壬生狂言」。小坡は美人画を拝見することが多かったけれど、こちらは風俗画。割とほわっとした描き方で驚く。こういう絵もあるんだ…。
そして梶原緋佐子「金屏」。金屏の影から姉弟子を見ている芸妓の妹弟子、というシチュエーション。その眼差しがなんともこう…いい…。


さて。
福田美術館にはミュージアムカフェがある。
「パンとエスプレッソと福田美術館」。
…「パンとエスプレッソと」はこちらの系列のコーヒーショップの屋号的なものなのだが、なかなかシュールな店名ですな。
若干お昼には早めの11時ぐらいだったので、ティラミスとホットコーヒー。


勿論美味しいのだけど、それ以上に美味しいのは、景観。
fukuda-art-museum.jp
こちらの建築についての話にあるのだけど、福田美術館には池、というか「水盤」がある。
廊下からも、網代文様の入ったガラス越しに見られるのだけど、目だと結構綺麗に見通せるのだが、カメラ越しが全く映らない。
ミュージアムカフェの窓際の席からだと、よく拝見できる。
水盤と、嵐山の渡月橋。…これは…なんて美しいのだ…。雨の日でも十分美しい(雨は雨で、水盤の波紋が美しいのだが)。
写真は敢えて載せない。これは訪問した方の特権でいいんじゃないかな。
堪能。
こちらのミュージアムカフェは美術館入場者のみで、カフェのみ利用でも入場料が必要なので、お気をつけて。


続く。