時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

杉浦非水 時代をひらくデザイン@たばこと塩の博物館


こちら、確か「タワービュー通り」という名前がついていた通りだったと思う。目的地へ行くのに(その前に食べ損ねたお昼を探して)彷徨っていたこともあり。


というわけで、押上駅から歩いてやってきたよ、たばこと塩の博物館
気になっていた場所ではあったんだけど、とうとう。
しかし、入場料100円は本当にびっくりする。いくら本業に即した博物館とはいえ…。

そして何やら強そうな方がお出迎えをしてくれる。


とりあえず、まずは常設から覗いてみる。


3階にはたばこ展示。
www.tabashio.jp
あまりたばこに興味がない(非喫煙家)けど、歴史的なものは面白いと思う性質なので、楽しい。
タバコ自体が南アメリカ原産で、実は15世紀ぐらいまではローカルな文化なんだね…。
そこから嗅ぎ煙草・パイプ(アジアだとキセル)・噛み煙草から葉巻・紙巻き、でもってアジアに渡って水煙草、と。
あと、コレクションギャラリーではライターコレクションもあるよ。


2階の半分が塩の展示。
www.tabashio.jp
実は冒頭の「人間は塩をとらないと生きていけない」話はちょっと興味深い話だった。狩猟時代は「敢えて塩をとる必要がない」というのが。食べ物=獣から塩分とれるから。なので、肉食獣は塩を食べなくても(自動的にとってるから)生きていける、という。なるほどね…。


で、2階のあと半分は特別展示室になっていて、今回はこちらがメイン。
www.tabashio.jp

杉浦非水。画家というよりはグラフィックデザイナーかな。個人特集の展覧会に来るのは初めてだけど、作品はいくつか拝見しているので。
杉浦非水は煙草のパッケージデザインもしているので、たばこと塩の博物館とも縁が深い。常設のたばこ展示にも杉浦非水デザインのパッケージの展示があったよ。


第1章「図案との出会い」。
杉浦非水は松山の生まれで(なので、この展覧会は愛媛県美術館所蔵のものが多い)、東京美術学校(現・東京藝大)の日本画選科にいたけど、黒田清輝に教えを受けて、図案家への道へ。
ちなみに洋画家の中澤弘光とは仲が良かったみたいで、中澤弘光が非水を描いていたり(「非水像」)、非水と弘光で与謝野晶子「みだれ髪」のイラスト入り「歌がるた」作ってたり。
中澤弘光、実は前回のレポートには書いてないんだけど。2室に代表作「おもいで」が今回も展示されていて(以前のレポートで書いたと思ったら、作品名出してなかった(あ))、微妙に繋がっていたりする。
で、非水は図案家となって、大阪に就職したんだけど、就職先の図案科が潰れて退職し、その後に島根で教員生活を送ってから、東京で再び就職したようで。
ちなみに島根と縁があるということもあってか、今回の展覧会は一番最初に島根県立石見美術館で開催している(次が東京、その後三重と福島へ)。…なんか最近よく、島根県立石見美術館が噛んでる気がするんだけど、気のせいなのか…。まあ、そのお陰で、島根県立石見美術館所蔵の黒田清輝「ポプラの黄葉(グレーの秋)」や岡田三郎助「黒き帯」が拝見できたわけだけど。


第2章「図案の開拓者」。
非水は東京で新聞社に就職して、本の装幀を結構手掛けていて、まず本がずらっと展示。
本に関しては本当にデザインという形で装填していた。女性を描いたりせず、植物等をモティーフにして。
そこから三越の嘱託デザイナーに。岡田三郎助が第1章で出てきたのは、非水の前に岡田三郎助がデザインしていたこともあったからだね。橋口五葉も参加してたり。
三越のポスターとか機関誌とか、イベントのポスターとかのデザインとか、ショールのデザインも手掛けていたけれど、嘱託ということもあって、他の広告系もかなり手がけていて、その辺りも沢山展示されている。
そしてもう一つの仕事としては、杉浦翠子の本の装填。杉浦翠子は非水の妻。非水の近所に翠子が家庭の事情で移り住んできて、この時代には珍しい恋愛結婚だった様子。モボ・モガな夫婦としても有名だったとか。元々学のある女性で、短歌の道に入って活躍したみたいで、歌集を夫婦で刊行してたんだね。


第3章「自然に学ぶ 写生と図案」。
非水の広告や本の装填の仕事、に加えて、ここには写生・スケッチが多く並ぶ。写生やスケッチを大事にする姿勢はデザイナーというより画家っぽいような。
あと、非水はカメラにも夢中になったようで、撮影した写真や無声フィルムも展示している。
もしかしたら新しいものも好きだったのかもしれないなあ、とは。


第4章「非水が目指したもの、のこしたもの」。
非水、40半ばで渡欧している。渡欧での携帯品やスケッチ、写真等。
渡欧中は藤田嗣治にお世話になっていたり。非水が藤田嗣治の写真撮ったりしてるのね。藤田嗣治の絵も展示されていたりするよ。
渡欧後は、更にデザインが明快で大胆でシャープになっている。より単純な線になっているというか。たばこのデザインも渡欧後のもの。
一番最後の「雨」は遺作。紫陽花の色がとても美しい…。


これ、特別展のお金をとっても良かったんじゃないかなあ。かなりボリュームあったよ…。


ミュージアムショップ、特別展のアイテムもあったけれど、タバコや塩のグッズもかなり多かった。


個人的には「マッチ箱に入ったお茶」を購入。箱デザイン可愛い…。