時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

開館60周年記念展 ミネアポリス美術館 日本絵画の名品@サントリー美術館

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海外の美術館からやってきた日本絵画の展覧会、という変わった趣向の展覧会。
で、ミネアポリス美術館、常設展は無料の美術館でインターネットでも所蔵作品を公開していて、そのせいなのか、なんと今回全ての作品が写真OK。なかなかそんな展覧会ないよねえ…。
前後期制だけど、入れ替わりは1つの章の作品だけ。


まずは4階に上がって。
第1章「水墨画」。
結構ざっくりな章タイトルだな…。室町~桃山時代ぐらいの水墨画
海北友松「江天暮雪図(瀟湘八景図のうち)」がとても雰囲気が良くて好き。
あと、山田道安「龍虎図屏風」の龍の顔がユーモラスで気になってしまったり。

第2章「狩野派の時代」。
書き手は割と狩野探幽が好きで、「笛吹地蔵図」はとても可愛らしいし、「瀟湘八景図屏風」(上記の海北友松と同じテーマなんだね)の余白を生かす描き方も好き。
更に目を引いたのは美しい仏画。作者は清原雪信。狩野派随一の女性画家。「騎獅文殊図」「飛天図」もただ美しい…。
あ、あと、狩野山雪「群仙図襖」に描かれてた蛙がなんともいい味で好き。

第3章「やまと絵― 景物画と物語絵 ―」。
書き手のツボは源氏物語図「胡蝶」(伝・土佐光吉)。
morina0321-2.hatenablog.com
先日から「胡蝶」は縁が深いのだけれど。やはりあの衣装の色の取り合わせは綺麗。

第4章「琳派」。
酒井抱一が2点。「楸に鷦鷯図」はいかにも酒井抱一らしい洒脱な軸。面白いのは団扇作品。片面が源氏物語「秋好中宮」。そしてもう片面が「白萩図」。秋の花である萩と、源氏物語の話の中で「春と秋どちらが好きか」と問われて「秋」と答えたことでそう通称されるようになった「秋好中宮」か。こういうセンスですなあ。
鈴木其一「三夕図」もとても淡くて美しい…。
そうかと思えばその間に挟むようにある中村芳中「大原女図」…中村芳中だから当然「ゆるい」のだけど、こんなゆるい大原女は初めて見るよ…。好き…。

ここから3階。ここにいきなりインパクトの強いものを持ってきた、なのかな。
第7章「画壇の革新者たち」。
書き手はそこまで伊藤若冲にこだわりはないんだけど、気になったのは「叭々鳥図」。


この回拝見した時にも思ったのだが、若冲の描く叭々鳥はとてもユーモラスだと思う。写真で実物見ると結構格好いいのにね、叭々鳥。
で、今までそこまで縁がなくて今回おお!となったのは曾我蕭白「群鶴図屏風」。六曲一双を全体で見ると荒々しい迫力みたいなのがあるんだけど、1つ1つの鶴の描き方がとても面白い。格好いいの、妙にデザインチックなの、愛らしい子と慈愛に満ちた親の親子鶴…。

章が戻って第5章「浮世絵」。
ここが唯一前後期で展示が変わる箇所。浮世絵は保存を考えると長く展示しておけないから、なのかと。
個人的に好みの鈴木春信とか歌川広重とか(でも、後者の「東海道五拾三次之内 箱根 湖水圖」は、岩がモザイクみたいな描き方されていて、広重の中でも面白いと思う)、悔しいけど撮影してしまう葛飾北斎とか(「諸國瀧廻り 下野 黒髪山 きりふりの滝」のビビットな描き方、凄いものね…)あるのだけれど、今回割と肉筆画(この辺りは通期展示)が気になった。勝川春章「美人図」歌川豊春「三代目瀬川菊之丞図」とか。
で、とてもインパクトが強かったのが三畠上龍「舞妓覗き見図」。覗き見する丁稚の少年の表情が(解説にもあった通り)グロテスクで独特なもの。そして覗き見される、花吹雪に着物の裾を巻き上げられた舞子の、なんとも艶やかな肌と表情。後で確認したら、上村松園に影響与えてるんだ。この肌の描き方はそうだよねえ…。分かる…。
あと、月岡雪鼎「藤娘図」は画題として気になってしまったり。

第6章「日本の文人画<南画>」。
気になったのは細川林谷。本職は篆刻家なのだけど、絵もよく描いた方だそうで。気になったのは、きちんとした山水画もあるのだけれど…「渋温泉図」「山水図巻」、とてもゆるい。「山水図巻」はさっと描きながらも綺麗な植物の絵もあるのだけれど、景色の絵がまあゆるい。これはこれで嫌いじゃない。

第8章「幕末から近代へ」。
佐竹永海「風神雷神図」。タイトルはありがち…なのだが、絵が普通じゃない。風神が鷲に捕まり、雷神が蟹に足を挟まれてる。どういうこと…。
一方、河鍋暁斎はやたらと細長い軸で「手長足長図」を描き、「お多福図」では碁や書でとても楽しそうに遊んでいる「おたふく」の方々を描く。お多福が7人なので七福神想定とか、遊ぶ碁や書は中国での「四芸」だったり、色々暗示はあるみたいだけど、とにかく「おたふく」が可愛くて和む。
かと思えば、鈴木松年「春山帰樵図」はとてもきちんとして美しい山水画だったり、池田蕉園「花見図」は端正に描かれた淡い背景と、船の上で花見をする女性達がとても華やかだったり。
で。


これはずるいでしょう…!と構図の格好良さと、虎の表情のどこか愛嬌もある格好良さに悶えてしまう、柴田是真「漆絵画帖」。
そしてこの展覧会へ足を運ぶ動機にもなった渡辺省亭「紫式部図」。こちらが写真撮影OKとか…ねえ…。
morina0321-2.hatenablog.com
ちなみに、先日の展覧会で同じ構図の「石山寺」が拝見できる。

海外の美術館の日本絵画のダイジェスト展覧会、というには、とても良い作品が多かったのではないかと。

以前からの推し絵師も、ここで惹かれて推しになった絵師も、おりますよ。しかしこれが一番最後にある展覧会というのも、面白いね。推し絵師紹介用のハッシュタグまで作られてるしなあ。


続く。