時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

美ら島からの染と織 ─色と文様のマジック@松涛美術館

shoto-museum.jp

敢えて美術館の入り口を写す形で撮ったけど、外観恰好いいなあ、松濤美術館は…。

國學院大(渋谷から15分、恵比寿から20分弱ぐらいの場所)から松濤美術館(渋谷から15分、神泉駅から10分)まで、徒歩で行くのはどうなんだろうね、書き手よ。しかも暑い日に。途中でお昼食べてたけどさ…。

琉球の衣装展示。結構、こういうの好きで。
ちなみに松涛美術館は展示の期間を結構細かく刻むのだが、訪れたのはB期(中期)。

まず気になったのは素材。丁寧な説明展示がされてた。絹(生糸よりは真綿から作る紬が多かったとか書かれてたな)、木綿、苧麻(ちょま=カラムシ、英語だとラミー、麻織物の1つ)、芭蕉、そして「桐板」。聞き慣れない、と思ったら、中国から輸入されている素材で、今では失われている正体不明の繊維、なのだそうな。なんと…。

第一章「紅型-沖縄の至高の染色品」。
とても明るい紅型がずらり。個人的には白地とか浅地(水色に近い色)が好きかも。
一番気に入ったのは「苧麻白地花籠牡丹燕菖蒲波頭文様両面紅型単衣裳」。

第二章「沖縄の織物」。
以前サントリー美術館で知った「紅型以外」の着物。
morina0321-2.hatenablog.com
ここは絣の着物が中心。紅型ではないのだけど、この辺も上級士族の衣装だそうで。個人的には落ち着いてて凄く好き。
なお、この展覧会で唯一写真OKだったのが、「紬黄色地ムルドゥッチリ袷衣裳(琉装仕立)」。黄色地なんであまり好みではないんだけど、でも幾何学的な模様も相まって、なんだか可愛い感じ。

先に第四章「沖縄染織の道具」。
松濤美術館は地階と2階に展示室があって、地階に第一章・第二章・第四章だったので、先にこちら。
紅型は図案を作成するための型紙が大事で、その型紙とか、それを掘るための刀(シーグ)とか、型紙を彫る時の台(ルクジュー)とか、染織に必要な糊(変なところに色がつかないようにするもの。防染糊というようで)の糊袋とか。物資不足の戦時中は糊袋に薬莢を使っていたり。ううむ…。
で、さらっと書いたルクジュー。なんと、豆腐で出来てる。まあ、確かに島豆腐は堅いけども。彫るのにちょうどいい堅さなのだとか。

さて、2階展示へ。第三章「多彩な染織品の数々-着物以外の染織品」。
ティサージという手拭(色々深い意味のあるものにもなるけど、割愛)と、チリデーウスーヤーという覆い布(テーブルクロスとかになる)。
ティサージ、凄くいい。沖縄の図案(紅型じゃなくて絣もある)がなんか凄いハマる。「木綿赤染ティサージ」は沖縄図案っぽくなくて、どうも梅の花ティーフっぽいんだけど、これもまた可愛い。欲しい(現代でお土産で作ってるだろうけど、図案とかどうなんだろうねえ…)。
チリデーウスーヤーも、今回展示されているのは「苧麻紺地巴紋入松竹梅文様布」というもので、紅型でなくて藍方(えーがた。高齢者とか下級士族向け用に藍で染める)なのだそうだけど、覆い布の図案としてはやっぱりいいなあ…。

最後の第五章「伝統を伝えて-現代の染織品」。
伝統を伝えて、と書いてあるけど、ただ伝えてるのではなくて、「復元」。失われてしまった沖縄の織物の技術を見つけ出して、なんとか近づけたり、自分のアレンジを加えたり、と。
気になった方々の作品。
平良敏子さん。芭蕉布の復興をされた方。復元も創作もなさってて、今回出ていた創作の「二重トッキリ」「緯段絣柳藍コーザー」どちらも好き。なお御存命(御年98!)で今でも現役作家でいらっしゃる。凄い…。
与那嶺貞さん。読谷山花織の復興をされた方。読谷は地名、山花織は「ざんはなおり」(内地の言葉だと「ざんはなうぃ」になるみたいだけど)という、浮織、要は浮いたような模様を織り込む技法の一つ。模様が花の形を表すので花織、というみたい。「絹紺地読谷山花織着物」、個人的に好み。ちょっと幾何学デザインっぽいのも好みなのかも。
藤村玲子さん。琉球舞踊の衣装を手掛けたりもしていたそうで。「絹紺地芭蕉に蝶梅模様着物」、素敵だったなあ…。

余談。
第五章には宮平初子さんの展示もあった。首里の織物を復興された方。
で、実は、検索したら、宮平初子さんと娘さんのルバース・ミヤヒラ吟子さんが、桐板を復元してたんだね。
sunchi.jp
今回の展示でとても参考になる記事だった。面白いなあ…。

いい展示だった。一番嫌だったのは、渋谷駅に歩いて帰ることかな(遠い目)
松涛文化村ストリートはそこまで人多くなくて落ち着いてるし、風景も恰好いいんだけどなあ…。