時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

日中国交正常化50周年記念 特別デジタル展「故宮の世界」@東京国立博物館

タイトルはこう書いてるけど、常設展がメインのような…。

www.tnm.jp

この特別展、年間パスポート持ってると、常設展との差額で拝見できるんだよね。1500円なので500円になるので、拝見するハードルが低い。
実際、通常に平成館で実施する特別展2階の部屋、半分しか使ってなかったしね。

こちらはデジタル映像に力を入れている展覧会。
で、デジタルなので、明・清時代のバーチャル紫禁城の映像どーん、と。こういうのが再現できるのは映像ならではだよね。
個人的には「デジタル多宝閣」が気になった。故宮博物館の所蔵品のうちの工芸の逸品を3Dコンピュータグラフィックスで。各工芸がぐるぐる、360度拝見できて、それはそれで(なかなか360度はないし)楽しいのだけど…自分の…自分のペースでじっくり拝見したい…!(我儘)
あ、東洋館の各部屋で拝見してそうな「清朝宮廷の書画と工芸」を、こちらはリアル物体で展示してたよ。


さて、常設展へ。

平成館にいるので、そのまま企画展示室の「創立150年記念特集 チベット仏教の美術―皇帝も愛した神秘の美―」。
ちょこっとだけ入れ替えが発生。
軸装の「白色ターラー菩薩像」が綺麗だったなあ。


で、そのまま本館へ。

16室。
アイヌは木偶たのしーってなってた(え)。面白い形が色々あってね。

18室「近代の美術」は日本画だけ入れ替わり。
前田青邨竹取物語」が良かった。顔の表現がちょっと現代的で。面白い。

2階にあがって7室「屏風と襖絵」。
円山応挙朝顔狗子図杉戸」。…め、滅茶苦茶可愛すぎる…。犬の絵は応挙よりも長澤芦雪の方が好きだろうと思っていたのだが、この可愛さにとてもじゃないけど抗えない…。可愛い…。
与謝蕪村「山野行楽図屏風」は左隻が愉快。山道を登れないであろう御年輩の方を、前から引いたり後ろから押したり負ぶったり…皆大変だ…。ここまで他人に力を借りて行楽したい気持ちは、正直よく分からないが。

8室の「書画の展開」。
書の方で酒井抱一の書状に引っかかるの悔しい。趣味が合うので仕方ない。
絵は、渡邊崋山「帰漁図」が味があっていいのと、谷文晁「公余探勝図巻 上巻」が日本画というより水彩っぽくておお…となったのと。

再び1階、12室「漆工」。
「蓮池水蒔絵舎利厨子」は…漆工なのかな。隣の部屋にありそうな感じ。
だけど綺麗だった。

13室。
「金工」は仏具も茶の釜も鏡もごっちゃに置かれてたような。
いいものを集めて出していた気はするけれど。


法隆寺宝物館。
6室。絵画(仏教掛け軸)がやけに綺麗だなあ、と思ったら、時代が鎌倉時代室町時代と新しい。…この時代を新しいと言っていいかは不明だが。
書跡も御桜町天皇なので江戸時代。新しいよねえ。
と思って染織も色彩も文様も豊かに残ってるな…と思うと、飛鳥・奈良時代だったりするから始末に負えない(遠い目)。意味が分からないレベルの保存状態である…。


東洋館も伺ったけれど、今回特別に触れるところがなく。


結局半日いてしまった。楽しい。

個人的には何かのキャラクターカフェ的な

この日のお昼、こちらでした。


肉汁餃子のダンダダン、でございます。「ソクドノオンガク」スポンサーありがたいでございますよ(平伏)

実は初来訪ではない。


7月に一度伺ってる。
ええと、実は書き手、「固めた挽肉」の料理が苦手でしてね…。ファーストフードのソースがっつりのバーガーは平気なんだけど、がっつり肉の塊の味がすると駄目で。
なので、肉団子とか肉詰めとか焼売は基本苦手。ハンバーグも苦手。
ちなみにつみれも豆腐ハンバーグも苦手なので、挽いて固めたものが駄目っぽい(魚は練り物になれば大丈夫)。

で、餃子は実は微妙なラインで、大体は大丈夫なんだけど、肉がぎっしりなのは苦手になる(宇都宮餃子で一度あったんだよね…)。
それもあって、7月にお試し(もし食べられなくても大丈夫なように、知人に付き合ってもらった)で。
結果、ダンダダンは全然大丈夫だった。肉汁の味がしっかりついてて、小籠包みたいなんだよね(小籠包は平気)。

で、7月の時点で伺った時、こちらのお店に伺った方はお分かりかと思うけれど、PE'Zがずっとかかっていた「みたい」。
書き手はPE'Zそこまで詳しくないけど、「Hale no sola sita~LA YELLOW SAMBA~」がかかってるのは分かった。
open.spotify.com
それもあって、スポンサーになってくれたんだろうなあ、ありがたいなあ、
となりながら、餃子にビール(プレモルなのが嬉しい…)に侍ジャズで楽しんでいた7月。

今回は昼間だったので、ランチの定食を。ビールも呑んでるけど。
で。

www.youtube.com
こちらも出たし(MVというかお店のCMでは、となりつつ)、店内音楽どうなってるのかね、と気になってたわけで。
入った瞬間に、聞き覚えのあるメロディー…Hale no sola si…違う!これ「晴天」だ!と一人ツッコミ。

www.youtube.com

店内音楽、がっつりH ZETTRIOだった。40分~50分ぐらい滞在したと思うけど、ずっと。
テーマソングも勿論あったけれど、オリジナルも、「ソクドノオンガク」の音源も。あ、はい、全部どの曲か分かりました(ヲタムーヴ)。
「ソクドノオンガク」の音源があるのは強いなあ。H ZETTRIO知らなくても、なんとなく知ってる曲?と思ってくれるお客様もいるかもしれないし。

なんというか。
個人的には、よくある企画ものの、自分が推しのキャラクターカフェに来ているようで。
しかもアルコールも入れてるし。
ぐふふ(駄目なほくそ笑み)

お腹も耳も御馳走様でした。また伺います。
あ、餃子も美味しいけど、自家製炙りチャーシューも美味しいよ!


続く。

松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.2@松岡美術館

www.matsuoka-museum.jp

ポスターがとても別嬪さんなんだが(言い方)、実は今回は洋画特集。
洋画なので(床の間に飾ってある日本画以外は)通期展示で入れ替えがない。


まずは展示室1。
www.matsuoka-museum.jp
中国の青銅器の文様について、だったけど…展示数は少なめだったけど、こう、東京国立博物館でやりそうな詳細な解説で。
饕餮文、龍文、鳳文、蝸身獣文、百乳文(とげとげしてる)等。



展示室4。
www.matsuoka-museum.jp
霊獣特集。
morina0321-2.hatenablog.com
東京国立博物館でやってた動物特集、東洋館5室(中国の青銅器&陶磁)で、空想の動物が多かったことを思い出す。
で、こちらの部屋は陶磁が多いのだけど、今回はどちらかというと、緑釉とか三彩(要は副葬品系)とか、後は玉の工芸が気になってしまった。


こんなのあるんだもの。翡翠の白菜(「翡翠白菜形花瓶」)とか、ひいいってなるよ。
あ、陶磁だと、「青花麒麟花蝶文方形瓢瓶」の麒麟が凄いゆるくて印象に残ったり。


展示室5・6。
松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.2 西洋絵画展―東洋のかおり - 松岡美術館
というわけで洋画、なのだが。

まずは展示室5から。
最初に出ているのが展覧会ポスターにもいらした力強い目の美少女、ヨン・フレデリック・ピーター・ポルティーリエ「オリエントの少女像」。
…ええと、ぐぐってもこの絵の話しか出てこないのだけど、どなたなんですか、ポルティーリエ。19世紀のオランダの画家だそうなのだけど。

で、その後には風景画が続く。
イギリスのベンジャミン・ウィリアムズ・リーダー、ウォルター・J・ワトソン、ドイツのカール・ケンツラー、ユリウス・ヤコブ(子)…全然存じ上げない(遠い目)。でも、それぞれとても素敵な風景画。
ベンジャミン・ウィリアムズ・リーダーはイギリスでは有名な風景画家だそうで、彼だけ辛うじて検索できたんだけど、他はなかなか見つからない…。

で、床の間に日本画と、何故かギリシア出土の女神像…と言われないと女神と思えない、小型の何かがいたりしつつ(あ、でも、個人的に凄く好き)。

次に続くのは肖像画
チャールズ・エドワード・ペルジーニ(イタリア人だけれど、イギリスで活動していた画家)「束の間の喜び」。
またも美女が!ドレスも持っている花籠の花もとても素敵。
こちらはラファエル前派に影響を受けてる肖像画家なのね(奥様も画家で、小説家のディケンズの娘さんだと…?)。
で、そちらの解説にもお名前が出ていた(奥様がモデルをしてたことがあるそうな)のもあるけれど、次の絵はタッチで分かる、ジョン・エヴァレット・ミレイ聖テレジアの少女時代」。
幼児の男の子を手をひいている少女の絵で、ミレイは子供の絵を描かせたらやはり凄く素敵なのだけれど、こちらは服装がちょっと変わっている。どこの服装なのだろう…。東洋入ってるのかな…。
更に美少女が続く、ウィリアム・アドルフ・ブグロー(表記はブーグローだった)「編み物をする少女」。ブグローはフランスのアカデミズム絵画だけれど、とても綺麗な女性を描くなあ…。

で、ここから毛色が変わって、とても見覚えのあるタッチ、空、海。
ウジェーヌ・ブーダン「海、水先案内人」。ブーダンお持ちでしたか!
でもってクロード・モネ「サン=タドレスの断崖」と続く。
印象派を否定していたブグローの後に配置される印象派系という…。「サン=タドレスの断崖」は若い頃の作品で、まだそこまで印象派っぽくはないけど。
そして続く、ちょっと点描入ってる絵。アンリ・マルタン「入江、コリウール」。
morina0321-2.hatenablog.com
実は松岡美術館も、こちらの展覧会を意識しているようで(twitterの絵は後で出てくるよ)。

で、その後はフォービズムの方向へ。
あまり得意ではないけど、アルベール・マルケ「アルジェの港」「ツーロンの港」は個人的に好きだなあ。

展示室6。
こちらは新印象派だったり、ナビ派だったり、エコール・ド・パリだったり。
前述のtwitterにあった、アンリ・マルタン「ラバスティド=デュ=ヴェール、ロット県」はこちら。ただ、マルタンにしては、2点とも少々画面が暗めだろうか。
ナビ派エドゥアール・ヴュイヤール。個人的に好きな作家なので嬉しいなあ。「フリデット・ファトン」のソファで余裕そうな顔の女性も、「ウジェーヌ・フレシネ夫人の肖像(習作)」の魅力的な笑顔の女性も、いいなあ…。
エコール・ド・パリで気になったのは、マリー・ローランサン「帽子をかぶった少女」。マリー・ローランサンの画風は好きなのでね…。
キース・ヴァン・ドンゲン「シャム猫を抱く婦人」の夫人の表情も気になる。


この洋画の収集、本当に描いた画家のネームバリューとか関係なく、「自分の好きな絵が欲しい」的な感じでいいなあ…。
とても興味深かったし、美しかった。


おまけ。この日の花手水。

続く。

石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 田園、家族、都市@アーティゾン美術館


特別展が6階と5階で行われていて、4階はコレクション展。

コレクションは現代美術が結構多かった気がする。その辺の好みは感覚でしかないからなあ…。
その中にしれっと、シャルル=フランソワ・ドービニー「レ・サーブル=ドロンヌ」が入ってたりして。
あと、円空仏が2体ほど。
レンブラントエッチング「大きな樹と小屋のある風景」もあったなあ(もしかすると特集コーナーの前振り…?と後になって思う)。


さて、特集コーナーは「田園、家族、都市」。
www.artizon.museum

部屋の右半分と左半分で、ちょっと色が違う。

先に右半分。
最初は風景画2点…ってアルフレッド・シスレー「レディーズ・コーヴ、ウェールズ」が出ているんだが。書き手はシスレー大好きなので、これだけでも美味しいぞ…。珍しく荒々しい水を描いてはいたけれど。
で、更に婦人の肖像画が2点。トマス・ゲインズバラとジョージ・スミス(前者は有名だけれど、後者はググってもお名前が出てこないな…)。どちらも美しい。
更にウィリアム・ホガースの都市風俗風刺画(エッチング&エングレーヴィングで)。陽気なんだか不健康なんだか、という感じだけど、こういうの嫌いじゃないんだよね…。

で、左半分。
白と黒の世界。エッチングやエングレーヴィングの技法で描かれている、風景画。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージのとても細かい風景画。ローマの画家だそうで。
…というか…この名前聞き覚えが…。
更に出てきたのがシャルル・メリヨンにジャック・カロ。ああ、思い出したよ。
morina0321-2.hatenablog.com
国立西洋美術館エッチング特集!ピラネージは記事に名前出してないけれど、作品展示されてたよ…。
別の展覧会なのに、まるで続きというか、延長戦というか。前も割といいなあと思った特集だったので、かなり楽しんでしまった。
そうそう、解説のところには「アントニオ・カナル」の名前があったけれど、残念ながら作品はなかった…。アントニオ・カナル=カナレットのこと。ヴェドゥータ(都市景観画)で有名だし、あっても良かったよね、とは。


いやあ、予定外に楽しかった…。



というわけで、平日昼間に少しアルコールを入れる(呑む口実に使うな)

生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎@アーティゾン美術館

www.artizon.museum

morina0321-2.hatenablog.com
京都国立近代美術館のコレクション展で触れた「東京での特別展」はこちら。
コレクション展(常設展)であれだけ拝見できたとなると、特別展はハードルが上がってしまうのではないだろうか、という一抹の不安が…。
坂本繁二郎が好みの画家なので、勿論楽しみも大きかった。
前後期制で、多少入れ替えがあるみたい。


最初は6階。
第1章「出会い」。
1-1「森三美先生」。
青木繁坂本繁二郎も久留米生まれで、森三美(もり・みよし)の画塾で出会ったようで。
で、坂本繁二郎「立石谷」でびびる。15歳の時に描いた油絵じゃなくて水墨画なんだが…めちゃくちゃ上手いんだけど?え、えええ…。水墨画だけど、洋画のような遠近法をきっちりと描いている絵。天才系じゃないか…。
森三美は洋画家なので、洋画の手ほどきを受けるのだが、以前、京都国立近代美術館で拝見した「秋の朝日」はこの頃の作品で、どうやら元の図版(「A. F. グレース『油彩風景画の指南書』」)を元に描いているらしく。道理で珍しい画題だと…。

1-2「上京、青春」。
青木繁が先に上京して、一時帰京した時に絵が上達したのを坂本繁二郎に見せて、坂本繁二郎がライバル心で上京した、という少年漫画っぽい感じの流れだったりする。
で、一緒にスケッチ旅行なんかもしてるんだよね。
当時のスケッチは青木繁の方が多く残っている。「碓氷川磧」「落葉径」「小諸宿外」辺りはなかなか良い雰囲気。
あと、両名の裸体や石膏像のスケッチ、あとは青木繁が興味があったらしい舞楽面のスケッチとか。

1-3「画壇へのデビュー」。
青木繁は白馬会展、坂本繁二郎は太平洋画会の展覧会でデビューしたそうで。
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太平洋画会は以前こちらで触れた。
で、その後千葉に一緒に向かって、青木繁は代表作の1つ「海の幸」を描くと。
この章、青木繁の展示が非常に多いので、制作充実してたのではないかなあ。画壇デビューはしたし、恋人もいたしね(ぼそ)。
個人的な好みとしては、多く描いている「海」のシリーズ(「海」「海景(布良の海)」等)とか、「闍威弥尼」「丘に立つ三人」みたいな宗教関係がモティーフのもの、「輪転」「狂女」「少女群舞」みたいなより幻想的な絵とか。
幻想的なのはなんか引っ掛かりがあるなあ、と思ったら、青木繁はどうもラファエル前派の影響を受けてたみたい。腑に落ちた。なるほど。
あ、京都国立近代美術館で拝見した「女の顔」も展示されていた。
でもって、宗教関係の流れなのかな、劇作家・中村吉蔵の翻訳した「旧約物語」に挿絵を描いていて、こちらの原画が出ていた。これが良い感じなんだよねえ…。
一方、坂本繁二郎はこの頃、画力は確かだけど多少画面が暗いかな、という絵を残している。
「早春」は農作業中の野菜を抱えた女性を描いていて、女性のくたびれ具合とかも凄く上手いんだけど、野菜が凄く生き生きした色をしているんだよねえ…。


第2章「別れ」。第2章で出てくる言葉じゃないという話はまあ。
2-1「東京勧業博覧会」。
この博覧会で、坂本繁二郎の方が青木繁より評価が高かったことが運命を分けた…というのがなんかいらっとくるなあという(あ)
いや、この時提示した青木繁「わだつみのいろこの宮」は個人的には好きな絵なんだけどさ。評価が不本意だったのも分かる。
ただ、青木繁は直後にお父様が亡くなったのが一番の痛手ではあったんだよねえ。なんというか、お金は人間の運命を変えるから仕方ないよ…(それを言ったら、坂本繁二郎は幼少の頃に父親亡くしていて、上にお兄さんがいたから(進学できないハンデはあったものの)多少絵に打ち込めた環境だったわけで)。

2-2「青木繁の九州放浪と死」。
青木繁はその後、家を出奔して九州を放浪して、お金を稼ぐために絵を描いていたのだが、その時代の絵が素敵である。
「月下滞船図」みたいな本格的なものから、「湯祭」みたいな戯れっぽい絵まで(それが味があるんだよねえ)。
風景画も素敵なものが多い。
青木繁は元々結核を患っていて、放浪して悪化して亡くなったんだよな…。
一方、坂本繁二郎はその頃結婚して、凄く安定した仕事をしていたり。「新聞」は奥様モティーフだったかな。いいよ。

2-3「青木繁顕彰のために」。
坂本繁二郎青木繁の没後の直後から、青木繁の顕彰運動に熱心だった。なんですかこの、少年漫画真っ青なライバルで親友…。
青木繁「自画像」はなんとも現実感が少なめで面白い絵で、並べられた坂本繁二郎「自画鏡像」は、とてもまともに描いている、という印象を受ける。


以降は5階。

第3章「旅立ち-坂本繁二郎」。坂本繁二郎のターン、である。
3-1「東京から巴里へ」。
坂本繁二郎は割と遅く(40歳かな)で渡仏してるんだけど、そこから色が変わっている。淡く、明るい。
「ヴァンヌ風景」「パリ郊外」「ブルターニュ」の幻想感がなんともいえずにいいなあ。
で、坂本繁二郎は馬の絵が多いけど、牛の絵もそれ以上に描いていて、この頃から顕著に。「うすれ日」が最初になるのかなあ。
「日本風景版画筑紫之部」の連作のような版画も手掛けてたり、肖像画というか人物も描いていたり、結構手広い。
人物画もきっちり描いているものもあれば、「読書の女」みたいに輪郭がぼやけてとても幻想的なものまで。個人的にはどちらも好き。
あ、あと、余談だけど、坂本繁二郎の絵に入っているサイン、「さかもと」って平仮名なんだよね。ちょっと可愛い。

3-2「再び故郷へ」。
渡仏後、坂本繁二郎は故郷の久留米に戻って、終生久留米で画業を続けてた。
ここは坂本繁二郎の絵が全開。幻想的な馬の絵、抽象画に近くなっていく静物画。
堪能。
で、この章にある「牛」がなんともいえない。座り込んでいる牛の背。牛に御本人を投影していた、という話もある。確かに坂本繁二郎、ゆっくりと、でも確実に人生を歩んでいった感じの方ではあるんだよね…。


第4章「交差する旅」。
青木繁坂本繁二郎の「共通の画題」を取り上げている。
4-1「能面」。
青木繁舞楽面描いてたから、まあ能面も派生で描きそうだけど(スケッチが結構残ってる)、坂本繁二郎もかなり作品を残している。
ただ、坂本繁二郎は能面を静物画として描いているので、なんというかその…ちょっと幻想的で、というか怖さまで感じるんだが…。妖しい雰囲気である。

4-2「「壁画」への挑戦」。
こちらはどちらかというと青木繁寄りなんだが、坂本繁二郎も壁画チャレンジしてることがあるとのことで。
こちらにあったレリーフ風の青木繁「春」(布に描いてるそうな)、これはラファエル前派を意識しているのか、それよりミュシャ的なものを意識しているのか。気になる。

4-3「絶筆」。
青木繁は九州を放浪して描いていて、最後に描いたのは「朝日(絶筆)」。海に上がる朝日。意外と前向きな画題だったんだなあ…。
ちょっと保存状態が悪くて、絵にヒビが入っているのが気になるけれど。
一方、坂本繁二郎は最晩年、月をモティーフに多く絵を残している。
偶然なんだろうけど、太陽と月、なんだな…。ちょっと出来過ぎじゃないですかって思わんでもない(あ)
幻想的なものも含めて、月の作品はとても素敵。
で、絶筆は「幽光」。月が雲に隠れて、光だけが微かに見える。素敵な絵だけれど、なんだか妙に切ない。


いやあ…良かった…。
青木繁坂本繁二郎に興味があれば是非、という展覧会。
後期展示になったら、また来訪するかもしれない。


続く。

東京国立博物館

前回と近所なので、ふらっと。


ぶっちゃけお昼食べたかったし。ガパオライス美味しかった。


まずは黒田記念館。
裸体模写が多かったかな。黒田清輝肖像画は結構好き。


食事をしてから本館へ。

2室「未来の国宝」。
土佐光起「源氏物語図屏風(初音・若菜上)」。個人的に土佐派の大和絵好きなのでそれだけでも十分なんだけど、この屏風、拝見している側が御簾越し、という設定で、御簾の緑が画面にかかってるのがかなり面白い作品。

10室「江戸(浮世絵)」。
恐らく夏休みだからか、ビッグネームを多めに。
個人的に、鈴木春信が4点出ていたのはありがたい…。
あと、喜多川歌麿の肉筆画「立姿美人図」が。これは綺麗だな…。


特別1室。実は非常に気にしていた「令和3年度新収品」。
大木平蔵の雛人形一式がとても美しい…。
伝・藤原佐理「道済集巻十九断簡(紙撚切)」。料紙も素敵だけれど、筆が独特なんだよね…。
狩野晴川院養信「松寿老・竹鶴・梅亀図」…なんだろうね、書き手の狩野晴川院養信好きなのは…。こちらもかなり好き。
前田貫業「鳥獣戯画(模本)」今回、こちらを売りにしてるっぽいんだけど、確かに鳥獣戯画の模本としてとてもクリア。楽しめるんじゃないかな。
「御所車蒔絵硯箱」。御所車のデザインだから古いもの(と言っても江戸時代)だろうに、地が市松を斜めにしてて(要は菱形を並べてる感じ)、凄いモダン。格好いいなあ。
ホータン(ウイグルなのですな)から発掘された「千仏図」が妙に素敵。この地域の美人なんだろうか。いやなんか、それぞれ凄くいい感じの表情をしている。
中央アジアから出た「女神像」も美しかったよ。


東洋館へ。

12室「東南アジアの陶磁」は個人的な眼福。
タイもベトナムも素敵なデザインの陶器が多い…。


13室。
「インドの細密画」は「ムガル帝国の皇帝像」。
「ズィーナト・マハル像」が気になった。王の妃で細密画になっている。何より強い意志を感じる描かれ方。ちょっと検索しただけだけど…なかなか動乱の方、だったのかね…。
「アジアの民族文化」は「南太平洋の生活文化」。
武器だったり貨幣(石とか貝とか)だったり楽器だったり、食器だったり。
食器はアプークというのだけど…よく拝見すると、耳杯っぽいね。
改良するとそういう形になるのか、それともどこかから伝わってきているのか、謎だけれど。


ちょっと、のつもりが結構楽しんだなあ。

日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱@東京藝術大学大学美術館

museum.geidai.ac.jp

宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品が拝見できる、と聞いたら。
書き手、実は三の丸尚蔵館に行ったことがない。行きたいとは思っていたのだが、タイミングがどうも合わず。で、ただいま新施設移行で休館中ということで、実施してくれた模様。ありがたい。
ちなみに展示は三の丸尚蔵館の収蔵品だけじゃなくて、東京藝術大学所蔵もあるよ。
あ、ちょっと変わった前期と後期で、展示入替あるよ。

展覧会公式twitterが作品紹介してくれているので、詳細知りたい方はこちらで。
twitter.com

今回は3階から。

「序章 美の玉手箱を開けましょう」。
いきなり置かれている「菊蒔絵螺鈿棚」。なんか凄い豪華で眩しい…。メインは蒔絵(川之邊一朝「他」ってなっていたので、複数の方が制作に関わっているっぽい)なのだろうに、金具を海野勝珉が作成していたり。細部まで…。
この章、他には岡倉天心の「「日本美術史」講義ノート」とか、法隆寺金堂四天王像の拓本とか、金堂壁画のコロタイプ複製とか、実は資料文献が多いんだけどね。


「1章 文字からはじまる日本の美」。
文字が主、というか、経典とか文書とかになるので、もしかしたら地味な章かもしれない。
個人的には「紫紙金字法華経 巻第二」の紫地の紙が(紺地と比べると)柔らかい色をしていていいなあとか、伝・藤原行成「粘葉本和漢朗詠集」や伝・藤原公任「巻子本和漢朗詠集」の料紙もツボ。
伝・藤原公任「大色紙」も文字が芸術的な軸装で良いなあ…。


「2章 人と物語の共演」。
物語関連。縁起もあったりする。
伝・狩野永徳源氏物語図屏風」。狩野永徳っぽいらしいので伝、なのだけど。いや…美しいですな…。大和絵じゃないんだけど(桜の描き方は狩野派っぽいし)、大和絵の気品をなんか感じるんだよね…。素敵。
で、伝・ 土佐光則「源氏物語画帖」。こちらは完全に気品のある大和絵。描かれている和歌の料紙も美しい。眼福。
一方、鎌倉時代に描かれた「絵師草紙」、これが凄い現代の漫画っぽい顔の描き方で、ちょっとびっくりする。
ここは彫刻もいくつかあって。木彫の山崎朝雲賀茂競馬置物」は、馬の躍動感が物凄い格好いい。金工の海野勝珉「太平楽置物」は雅楽太平楽を舞う老人。細部に渡って凄く綺麗で。武装なんだけど、「戦えない武装」で、平和の象徴なんだよね…。


でもって地下2階へ。

「3章 生き物わくわく」。
動植物(空想の生き物も含む)題材。
部屋の入口に彫刻を置いてて、部屋全部は見られないように仕切りがあって。仕切りの中は、絵画を周囲に配置して、空間の中には様々な立体配置(彫刻とか工芸系)、という置き方。
部屋の入口のところの彫刻は「鼬」が可愛かったなあ。作者不明だけど、明治天皇御遺品だそうで。わかる。
絵画。
まずは酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」…書き手狙い撃ちかな(あ)ドツボ。
でもって横山大観「龍蛟躍四溟」。龍と蛟(みずち)の絵なのに迫力がある感じでなくて、むしろ表情が優しくて穏やか。こちら、寿ぐために描かれたものだそうで。
今回目玉の1つ、高橋由一「鮭」。有名絵ですなあ。個人的には鮭の皮の描き方が凄いなあ、と思う。


そしてこんなコラボでグッズ作ってたり。
で、工芸系。…え…これ…全体的に凄い作品多くないか…?
加納夏雄「百鶴図花瓶」は描く鶴の線がとてもシャープで格好いい。
板谷波山「葆光彩磁花鳥図花瓶」は安定の美しさ。
初代伊東陶山「上絵金彩蝶尽卵形合子」。細工は細かく、卵型なのが妙に可愛い。
牙彫の「羽箒と子犬」。牙彫にしてはやや大きい、でも他作品よりは小さめ、というサイズで、丁度いい感じ。円山派っぽい子犬が立体化していて可愛い。羽箒の羽の細工が非常に細かくてうわあああ、となる。
沼田一雅「牛と童」。牛の首の皺の寄り方のリアルさとか、牛の皮膚の触感を凄く感じるところとか。凄いなこれ…。
十二代酒井田柿右衛門白磁麒麟置物」。白磁麒麟が本当に凛々しい。白磁だからこそ。格好いい。
高村光雲矮鶏置物」。少々小ぶりの木彫の鶏2羽。…なんでこんな羽根がふくふくした感じに見えるのだろう…。リアルでもあるんだけど、それに加えて美しさとか可愛さを感じるのが凄い。


「4章 風景に心を寄せる」。
風景関連だけど…いきなり並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」が展示されていて、書き手がぶっ倒れているわけなのだが(あ)黒地の上に繊細な桜…。
ここは部屋半分が日本画で、半分が洋画(油絵)。
日本画は海北友松「浜松図屏風」「網干図屏風」。…海北友松ってかなり前衛的な気がしません?書き手だけ?ちょっと凄いよね…。安土桃山時代とかの絵師だよな…。
川合玉堂「雨後」はとても美しい。これだけ虹を綺麗に書ける日本画家もそういないよね…。
で、実は洋画の4枚の絵がとても素敵。
五姓田義松「ナイアガラ景図」(この時代でナイアガラ描いてるのも凄いことだが)、高橋由一栗子山隧道」、中村不折「淡煙」、和田英作「黄昏」…どれも素敵な風景画なんだが…おおお…。


個人的にはドツボな展覧会だった。
これは後期も行くんだろうなあ…。


なお、グッズ販売のところで、鮭のふりかけを買うかどうかで悩んだ書き手だった。
鮭のふりかけを展覧会グッズとして売る気持ちは買いたい(でも、味が分からないと購入するのが怖いんだよ、食品系…)。


続く。