時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立博物館

Q.こないだが今年最後になるんじゃなかったんですか?
morina0321-2.hatenablog.com
A.だって来られたんだもの(理由になってない)


というわけで改めて、今年最後の御挨拶。


本館3室。
「仏教の美術」の一画で仏舎利・舎利塔等の展示。
「金銅能作生塔」が、色はくすんでしまったけれどよく見ると素敵なデザイン…と思ったら、国宝だったよ…。写真OKとか本当…?
あ、他の展示物だとNGもあるのだけど、今回の展示は本当に美しいものが多くて眼福。恐らく、今回正月に展示するものも多くて、その分華やかにしているのではないかと。
仏画だと「弁才天十五童子像」、経典も煌びやかだったり紺紙金字で美しいものも多かったり。
「宮廷の美術」の「酒呑童子図扇面」もそう。
伝・藤原行成の書も恐らく。美しさと幽玄さと。


本館18室「近代の美術」。
日本画が入れ替わった。拝見したことがあるものばかりだけれど、やはり美しく優品のものばかり。
…と言いますか。

柴田是真「雪中の鷲」と渡辺省亭「雪中群鶏」が並んで展示という、書き手ツボ過ぎる並びは眼福過ぎるでしょう…。


ちょっと平成館の考古展示室へ寄り道。
珍しく半分ぐらい展示が変わったので。
翳形(さしばがた。「さしば」は貴人にかざす団扇形の用具だそう)埴輪とか不思議な埴輪があったり、「古墳発見の石製模造品」で石で作られた刀子に鑿・鉋に下駄…と、色々面白い。


本館に戻って。
本館14室は特集「日本人に愛された華南のやきもの」。
あまり中国の陶器は好みではないけど、日本の茶の湯に使用されたものは流石に美しいなあ。「唐物文琳茶入 銘 宇治文琳」とか、「灰被天目」とか。前者は茶入を格納する布地も良くてねえ…。間道とかもあるし。
あと、「白磁観音像」が気になった。解説にもあったけど、これ、マリア観音として使用されてそうだなあ…と。


本館16室。
アイヌはかんじき・手袋・靴・脚絆…と、衣服系が充実してたりしたけど、何よりストゥ(制裁棒、処刑用)がずらっと並んでるのが…なんともまあ…。
琉球は、外へ飲食を持ち運ぶための「三人弁当」と「茶庫」が珍しい。
琉球衣装は紅型の「黄色地松川菱繋菊椿檜扇団扇模様」。なんかめでたい感じ。


キッチンカーのミネストローネで休憩をとってから(外が寒かったので温かさが丁度良かった…)法隆寺宝物館へ。


法隆寺宝物館6室。
普段は染織だけなんだけど、今回はまず書跡に。
「梵本心経並びに尊勝陀羅尼」、般若心経の最古写本だと…?というか、小さい紙に梵字ぎっしりで。こういうものも保管されているのか…。
江戸時代に浄厳という僧がこちらを訳した「訳経記」も並べられていた。
いつもの染織なのだが。毎回よく布がここまで残っているなあ、と思うのだけれど、今回のはとびっきり。模様がはっきり分かるのだもの。「玉帯残欠」、最初は模造かと思った…。


最後は東洋館へ、と思ったら、東洋館は地上の部屋が全て閉鎖。
地下だけ開いていたので、大好きなガネーシャ坐像に今年終わりの挨拶をして(え)、この日は終了。
ううん、東洋館がなかなか回れない…。




ともあれ、今年もお世話になりました。
来年もよろしくお願い致します。メンバーズパスも更新したことだしね。

寄り道


衣装展示は諸事情で延期になったのだけれど、発売日だしポスタージャックもあるし、ディスプレイ楽しそうだなあ、と、わざわざ新宿へ。


こちらのポスターも拝見(ここで拝見できるからいいでしょう、と写真撮ったのに載せない辺り)。

正直、写真撮影していない売り場の情報量の圧が凄かった。流石でございます…。


分かりますかね、白い文字びっしり。ボード、黒なんですよ?

※衣装展示は12/29からになった様子。


続く。

ザ・フィンランドデザイン展 自然が宿るライフスタイル@Bunkamura・ザ・ミュージアム

www.bunkamura.co.jp

たまたま平日にお休みが取れて、平日は渋谷に出るチャンスなので。


INTRODUCTION「フィンランドへようこそ!」
今回の展覧会なんだけど、フィンランドは1917年に独立したので、それ以降のデザインの話になる。
で、最初の導入章では、第二次世界大戦から数年後の観光ポスターや、1940~50年ぐらいの写真が。トーベ・ヤンソンが水辺ではしゃいでる写真とか拝見できるよ(そこ?)
ニュストロムの観光用ポスターは、特設ショップのグッズにもなってた。フィンランドの特産物(サーモンとか熊(の毛皮)とかw)が詰まってて、可愛いんだよね。


CHAPTER 1「オーガニックなイメージ」。
有名どころはアルヴァ・アアルトかな。先日、展覧会もあったものね(拝見できなかったけど)。建築家として有名だけれど、インテリアもガラス製品も作成されている。
インテリアというか椅子はアルテック社、ガラス製品はイッタラ社がライセンス保有してるのかな。
www.iittala.jp
ガラス製品だとこのシリーズ。
www.artek.fi
そしてこちらの椅子が出ていた。「結核患者のためのデザイン」というのがいいなあ。
もう1つの椅子はイルマリ・タピオヴァーラのドムスチェア。
www.artek.fi
重ねて収納できるのもポイントだそうで。
で、この章でもう1つ気になったのは、ドラ・ユングの「ティンバー(木材)」テーブルクロス。やはり布は気になる…。
ドラ・ユングはタンペッラ社のデザイナーだったんだね。タンペッラ社自体がもうないのだけど。


CHAPTER 2「機能的なデザイン」。
キッチンとか食卓に並ぶあれこれ、かな。
まずはアイノ・アアルト。アルヴァ・アアルトの妻。
ボルゲブリックシリーズ。
www.iittala.jp
こういうデザイン。ボルゲブリックはフィンランド語で「波紋」。このデザインだと、プレスガラスで発生しやすい気泡が目立たなくなるんだそうで。1932年のデザインだから、丁度世界恐慌真っただ中か…。物資も多くなかったかもしれない。
あとは陶器かな。クルト・エクホルムの「AH」シリーズも、カイ・フランクの「BAキルタ」シリーズもとてもシンプル。
BAキルタシリーズはシンプルで、色の組み合わせも自由にして良い、というコンセプトだったそうで。このシリーズではないけど、カイ・フランクの現在扱われているシリーズも、とてもシンプル。
www.iittala.jp


CHAPTER 3「モダニズムのアイコン」。
今までの展示物はどちらかというと機能的なデザインだったけど、ここはがっつりアート系、要は飾ることにしか使えそうにない作品(おい)。
アート系なので基本的に感じろ系だけど、グンネル・ニューマン「花瓶「オランダカイウ」」は美しいなあとか(オランダカイウ=カラー。花自体が綺麗なデザインだよねえ…)、タピオ・ヴィルゥカラ(ウィルカラという表記もあるみたい)「イソシギ」は小型のものが可愛かったり。
展示としてはその辺とは離れたところにあったけれど、「ウルティマ・トゥーレ(世界の果て)」シリーズは美しかったなあ…。
www.iittala.jp
※こちらだと表記は「ウルティマ・ツーレ」だけど。
氷表現なのでちょっと冷たそうだけど、実用もできそう。
陶器だと、フリードル・ホルツァー=シャルバリの「ライス・ポーセリン」のシリーズが植物の葉のイメージなのかな、シンプルで素敵だったり、キュッリッキ・サルメンハーラの、東洋の茶の湯とかで出てきそうな肌の色の陶器とか。
後は、布物かな。ウフラ=ペアタ・シンベリ=アールストロムのラグは暗い色なのになんか落ち着いた。ライラ・カルゥトゥネン「凍ったグラス」も格好いい。
でもってここでも出てきたドラ・ユング。「テーブルクロス(大きな魚)」の魚の顔が可愛かったり、更に灰色地に孔雀柄の「不滅(孔雀)」。孔雀、欧州…というかキリスト教なのかな、永遠の意味合いがあるんですな。
…ちょっと別方向に思念が飛びかけたけど(あ)、でもこの孔雀デザインはいいなあ。
その展示とは少し離れたところにあった「テーブルクロス(葉)、モデル872」も幾何学模様みたいで素敵だった。


CHAPTER 4「絵画のように」。
この章はテキスタイルが主。フィンレイソン、タンペッラ、そしてマリメッコ
フィンレイソンは同時期に京都文化博物館で展覧会が(少々気にはなってた)。
www.bunpaku.or.jp
フィンレイソンはアイニ・ヴァーリとルート・ブリュック。
アイニ・ヴァーリは今でも「タイミ」のデザインは残ってるけど、そっちじゃなくて「メルセレッテ」の葉が絡み合う感じの方が好きかなあ。
ルート・ブリュックはタピオ・ヴィルゥカラの妻。セラミック・アーティストで、そちらの作品も今回の展示にあるのだけど、個人的にはシンプルで色彩豊かなテキスタイル「セイタ」シリーズの方が好き。
タンペッラはアウネ・ラウッカネンの「タオル(カラ(魚))」が結構可愛いのと、ドラ・ユングのテキスタイルサンプルがずらずらっと。どれも素敵だけど、やっぱり目に入る孔雀テキスタイル「フェスティヴォ」(フィンランド語で「孔雀」)。
でもってマリメッコ。シンプルだけど明るい…。冬が長いから、こういう色の布が流行るのかもなあ…と。デザイン可愛いよね、服は派手になるから着るのが難しいけど…。
あ、テキスタイルが主ではあったけれど、カーリナ・アホの陶器「卵入れ」が気になった。可愛いの、鶏の形してて。


CHAPTER 5「暮らしの中のモダンデザイン」。
広告やカタログが主なコーナー。
だけど、エヴァ・アンッティラ「タペストリー「夜の街」」は格好良かった。都会を上手くデザインに載せてる感じ。
そうそう、ここにはトーベ・ヤンソンの油絵がある。そういうのも描かれるのか…。


CHAPTER 6「フィンランドの妖精たち」。
というわけで、ようやく(?)ここでトーベ・ヤンソンムーミンシリーズが出てくるのだけど。ちなみにムーミンの布のテキスタイルはフィンレイソンが扱ってる。
個人的には、子供部屋みたいに飾ってある一画の、木製のおもちゃの車のシリーズや、素朴な木製人形が可愛くて良かったなあ。木製人形はカイ・フランクのデザインなのよね。
ライラ・カルゥトゥネンのデザインの「ラグ(楽しい乗馬)」もなんかほっこりした(「凍ったグラス」とはまた随分違うデザインだけども)。
あと、書き手はあまり北欧ものに詳しくないので、初めてちゃんとソレを認識したのが「ヒンメリ」。
藁のモビールフィンランドのユール(クリスマスと同義だけど、どちらかというと北欧神話の性格なのかな)で飾られる。

www.youtube.com
書き手、本当にこちらでヒンメリという言葉を知ったのよね…。


これで展覧会は終了だけど、特設ショップの一画に。

こんなフォトスポットが。北欧のログハウスメーカー・ホンカの日本法人(ホンカ・ジャパン)とのタイアップ。
www.honka.co.jp


いや、これはなかなか面白い展覧会ではあった。


さて、実は問題は特設ショップ。


写真はお遊び的な写真だけれど(上述したドラ・ユングの「不滅(孔雀)」と「フェスティヴォ」のグッズ)。
毎回思うのだが、このような展覧会、特設ショップでの財布の紐を緩めるのが本当に大変!これ以外にも色々買っちゃってる。ああもう。
ニュストロムの観光用ポスターとか、アイニ・ヴァーリ「メルセレッテ」のデザインのグッズとかもあったし…。


続く。

企画展「アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―」@國學院大學博物館

根津美術館からは歩いて10分ちょっと。美術館通りの銀杏が綺麗。


本当に通り道にあるのですよね、こちら。


閑話休題



museum.kokugakuin.ac.jp
國學院アイヌ?と一瞬思ったのだけど、そうか、金田一京助氏が國學院の教授か。
短期大学部(北海道にある)で、金田一記念文庫というアイヌ研究の資料保存をしているそうで。
www.kokugakuin-jc.ac.jp
アイヌプリは「アイヌとしての生き方」みたいな意味らしい。



まずはこくぴょんにご挨拶(また話が逸れそう)。


まずはメインの企画展。
國學院大學博物館の企画展はちょっと広めのお部屋で開催なので、こじんまりではある。入場無料なので文句は全くないけど。
金田一記念文庫があるので、非常に文献が多い。基本的には(アイヌは文字がないので)「和人」から見たアイヌの記述になる。松浦武四郎の文献も相当数。
とはいえ、少ないながらも「物品」展示があり、しかも半分ぐらい写真OK。ありがたい…。
物品は代表的なもの。マキリ(小刀)・タマサイ(首飾り)・イクパスィ(箆、今回は「捧酒箸」と漢字が振られていた)、アットゥシ等。
アットゥシは「和人用」のもあった。通気性等が良くて、漁師が着物の上に着るのに使ったそうで。なるほど。
そういえばエムシ(飾太刀)の解説にあったけれど、アイヌは鍛冶技術に乏しくて、エムシは全て輸入品なのだそうで。こういうのも新たな発見。


で、常設展をぐるりと。
校史ゾーンのお高そうな展示物や、考古ゾーンの埴輪を見て楽しむ。

つい孔雀を撮影してしまう性。ちなみに書見台の形だけど、
ミニチュア。ミニチュアでこんなに豪華…。ミニチュアの本も付いてるんだよねこれ…。


博物館から退館後、ちょっとだけ構内に。


神社の方にご挨拶にも行ってきたり。別趣味の御挨拶も含めたり(ぼそ)。


ここまで来たので、山種美術館に寄って和菓子、とも思ったのだけど、今回は断念。
代わりに、(いつも和菓子を頂いてしまうので)気になるけどなかなか寄れなかった喫茶店に。

リンゴのパンナコッタと。美味しかった。
papas.jpn.com
チェーン店ではあるんですな。丸の内の本店、三菱一号館美術館の御近所だ。

鈴木其一・夏秋渓流図屏風@根津美術館


別世界で真っ先にNEZU Cafeに入った書き手(当日、ここまで飲食全く口にしていなくてですね…←言い訳)。


落ち着いたところで。

www.nezu-muse.or.jp
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」、2020年に重文指定されたそうで、そちらを中心に展示する展覧会。とはいえ、展示室6室のうち、該当展示で使用するのは展示室1と2のみ。
他はそれぞれのテーマ展示。


1室・2室のメインの展示から。
序章「檜の小径を抜けて」。
ここでは、元々狩野派で描かれた檜中心の構図が、江戸琳派に取り入れられた、という解説。「夏秋渓流図屏風」の檜の描かれ方に繋がっていく。
まずは狩野派の、狩野常信「檜に白鷺図」。幹の描き方が美しい。色を塗らない箇所を作って濃淡をつけてて。
で、ここから琳派に取り入れられたのだが、取り入れたのは鈴木其一の師匠・酒井抱一
「雪中檜に小禽図」…幹の濃淡のつけ方とか、雪を表現するために白を散らしているのとか、その中で小さいながらもぱっと赤い色を印象付ける南天とか、可愛らしい小鳥とか、酒井抱一のセンスよ…。

第1章「「夏秋渓流図屏風」誕生への道行き」。
まずは酒井抱一「青楓朱楓図屏風」と「夏秋草図屏風」。
「青楓朱楓図屏風」は尾形光琳をリスペクトしているそうで、その分あまり抱一の洒脱さみたいなのはない気がする。「夏秋草図屏風」はまあ、東京国立博物館で何度も拝見しているので。そちらだと写真OKなのにね、とか思いつつ(そこ?)
そしてもう1つのビッグネーム、円山応挙保津川図屏風」。
応挙は写生を重んじたこと、それから西洋の遠近法を取り入れていて、かなり立体的な表現で描いてる。そう思うと琳派は割と平面だけど、鈴木其一「夏秋渓流図屏風」はかなり立体的で、応挙の絵を参考にしたのではないか、という解説がついていた。
で、本題の「夏秋渓流図屏風」。確かに水の流れ方は立体的で、でも水自体の描き方は琳派のそれで。木の幹の描き方は師匠の抱一譲り、でも幹のそこかしこに丸く苔が描かれていて、まるでデザインのよう。
なんというか、不思議な絵というか。うん。

第2章「其一の多彩な画業に分け入る」。
タイトル通り、この章は其一の作品のみ。
驚いたのは、其一の絵は花鳥図ぐらいしか拝見したことなかったんだけど、意外とジャンルが広い。人物も描くし、江戸の風俗を描いていたりもする。
「宮女奏楽図」の衣装が綺麗だなあとか、「神功皇后武内宿禰図」の武内宿禰の衣装の描き込みが凄いとか。
個人的に気になったのは、抱一みたいな洒脱な描き方をしている「蝶に芍薬図」、「雨中牡丹図」の雨の描き方、表面に秋草、裏面に波と月を描いて、表面の秋草にぼんやり月が浮かぶように見えるようにしてる「秋草・波に月図屏風」かな。


他はテーマ展示。
展示室3を中心に、ホールにも並んでいる「仏教美術の魅力」。
ホールに配置されているのだけど「十一面観音菩薩立像龕」は美しいなあ…。
www.nezu-muse.or.jp

展示室4「古代中国の青銅器」。
ひたすら饕餮が見られる。ばんち文(蟠は出るけど「ち」が出ないな…璃の字の王篇じゃなくて虫篇)もあるけど。凄い細かいばんち文あったなあ…。

展示室5「筆墨の魅力 禅僧たちの書」。
書き手、この辺りはよく分かってないのだけど、「一休宗純墨蹟 偈頌」は非常に字が個性的だった。

展示室6「炉開き ─祝儀の茶会─」。
気になったのは、形の不揃いさが可愛くて、くっつきを防止する白土が上手い具合になってた「南蛮芋頭水指」、器自体の色も好きだけど器を収納する布の袋が船越間道でとても格好良かった「茄子茶入 銘 志賀」、渋い感じの「井戸茶碗 銘 宗及」と美しい肌の「志野茶碗」。


一通り回った後、庭園へ。

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無風の初冬の昼下がり、紅葉は盛りを過ぎていても美しく。
南天も小さいけれど鮮やかで。
ところどころにある仏像がたまに落ち葉で彩られていて。
飛梅祠の天神様は、散った銀杏が背景に積もっていて、銀杏の黄色が光背になっているようで。
池の鯉は大暴れしているのもいて。
とてものんびりと良い散策。


続く。

東京国立博物館

この日は夜に予定があったので、それまでにゆっくりしようと(何か間違っているような)。
特別展が開催されていない東京国立博物館、あまり訪れる人が少なく、一人占め感が強くて大変良い。
まずはキッチンカーでコーヒーを一杯頂いてから、本館へ。今回はのんびりなので、本館のみ。
今年はこれが最後になるかなあ…。12/25までしか開いてないし…。


1室「仏教の興隆」には「紺紙銀字華厳経 巻第九断簡」、別名「二月堂焼経」があり、2室の国宝では「白氏詩巻」が出ていて、紙好きな書き手にはとても楽しい。
3室だと「宮廷の美術」に出ていた伝・藤原行成の「大字和漢朗詠集切」や「和漢朗詠集断簡(法輪寺切)」、源兼行の「万葉集巻四断簡(栂尾切)」や「和漢朗詠集断簡(関戸本)」も素敵だったなあ。

3室「仏教の美術」、あまり仏画は得意ではないけど、「十一面観音像」はとても美しいと思った。

8室「暮らしの調度」は衣装だけ展示変更。
火事装束。火事装束は結構格好いいものが多いのだけど、「猩々緋羅紗地波鯉千鳥模様(抱き茗荷紋付)」は火事装束一式(頭巾+羽織)。真っ赤で派手で格好いいんだよね。猩々は前回の東京国立博物館来訪で触れた。
morina0321-2.hatenablog.com
同じく8室の「書画の展開」が展示変わっていたんだけど、今回はいまいち自分に嵌らなかった。
書の方になるけど、佐藤一斎「竹自画賛」で書と一緒に描かれた竹は素敵だったなあ。

9室は今回は歌舞伎(顔見世がこの季節にあるから、とのこと)。
派手ですねえ、歌舞伎の衣装は…。「羽織 浅葱繻子地雪輪南天模様」が一番好みだったかな。

10室。相変わらず江戸の「衣装」は眼福なんだけれど、9室が派手で、今回白地とか浅葱とか紺とか落ち着いた色が結構多くて、ちょっとほっとしたりした。
でもって「浮世絵」は季節柄、忠臣蔵。ずらっと葛飾北斎歌川広重忠臣蔵の絵が並んでいた。ビッグネームだ…。ただ、個人的に歌川広重は好きな絵師ではあるけれど、忠臣蔵のシリーズはいまいち好みでなかった…。
何枚か出ていた「名所江戸百景」シリーズの方が好み。「王子装束ゑの木大晦日の狐火」みたいな面白いのもあるし。化の狐。

1階に降りて11室。「彫刻」に菩薩立像が2体あったのだけれど、どちらも美しかった…。細部の細工も綺麗なんだよね…。

12室「漆工」。
「御所車蒔絵硯箱」は蒔絵に何か埋め込まれてところどころ光ってる。解説読んだら、切金を置いてるみたい。
「梅蒔絵硯箱」は梅の木の図柄が好み。
漆工で琵琶が出てるのは初めて拝見したかも(「琵琶 銘 大虎」)。
「垣秋草蒔絵歌書箱」は蒔絵の部分が多いのだけど、あまり蒔絵の色が派手でなくて、この色は好みだなあ。
「松梅蒔絵書棚」は模様のデザインがかなりモダンな気がする。

13室。
「刀剣」にあった「宝尽七宝文鐔」、七宝のワンポイントの使い方が非常に可愛い。
「陶磁」は、仁阿弥道八のとても美しい「銹絵雪笹文大鉢」と、愛嬌があって可愛らしい「色絵寿老置物」という、全然作風の違うものを並べて配置するのが好き。他にも、尾形乾山とか野々村仁清とか、この展示は年を越すので豪華なものを並べているのかな、とは。
高取の「黄釉沙金袋水指」の渋さとか、鍋島の「瑠璃地露文三壺形皿」や「瑠璃地芥子文酒呑」の、形が変わっていて色が青みがかってるのも素敵。

16室「アイヌ」も「琉球」も、衣服のみ展示替え。
琉球の「絣着物 黄地井桁崩模様」は絣と、明るい黄色の地がなんだか可愛らしい品。

18室「近代の美術」。
日本画は下村観山「楠公」がいいなあ。朦朧体が美しい景色と、鎧の細部まで細やかな描写に色彩。
彫刻は荻原守衛「女」。この静かな迫力はなんなんだろうね…。
陶磁はまず、「瑠璃地金彩唐草文仙盞瓶」。とても洋風なデザインでとても美しいけれど、作者が「四代高橋道八」。13室の仁阿弥道八から続く一門…!(実際、四代高橋道八は仁阿弥道八の孫に当たるようで)。あとは年木庵喜三「青地白堆波涛に獅子図龍耳瓶」。地の色がとても不思議な色。乳白色がかかってる緑。
金工は九代金谷五郎三郎「菓子器」。図案は梅かな、とても可愛くて良い。
洋画は山本芳翠「月夜虎」。虎がシンプルに格好良い。


本館一通り回った頃がだいたい16時半ぐらいで、後は本館の地下の休憩所でお茶を飲みつつ(平成館の休憩所が全面的に閉まっていて使えなかった…)。
後は本館、冬の衣服で歩くには少し暑かったので、外のベンチで涼んで、17時になる直前ぐらいに退場。

暮れる表慶館と本館はとても美しかった…。

深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」@上野の森美術館

上野恩賜公園も銀杏の美しい季節に。


上野の森美術館は今まで縁がなく、初来訪。

www.ueno-mori.org
www.kingyobachi-tokyo.jp
深堀隆介はメディアで見かけて、ちょっと気になっていた作家さんであった。
金魚の作品を作る作家さん。…金魚の作品「しか」作らない作家さん。


作品リストは会場に置いてなくて、ネットのPDFで拝見する形式。


写真がOKな作品があった。こんな感じ。


twitter上で歌いたかっただけなんじゃないかと真実を衝いてはいけない。


第1章「樹脂との格闘/進化する技法」。
まずはずらっと並ぶ、「枡の中の金魚」の作品「金魚酒」。
作成年代順に並んでいて、最初は中の金魚が平面だったのだが、2010年以降ぐらいの作品からか、金魚が立体化する。
どうやって描いているかは映像があったのだが、枡に樹脂を少し流す→固まるのを待つ→パーツを描く→枡にまた樹脂を少し流す→固まるのを待つ→パーツを描く…の繰り返し。勿論、ちょっとでも失敗したら作品丸ごと終了。
…これはやばい作家…。
ちなみに、金魚もだけど花びらや水草が浮かんでいる作品も多数で、これもまた美しい。
大きな枡や、木の風呂桶に多数の金魚を描いているパターンの作品も。
大きな枡に大きな金魚どすん、という存在感のある「蒼宿」も面白い。


第2章「2D-平面に棲む」。
その名の通り平面作品。和紙や木のパネルに描いている(次の章の作品も混ざって置かれているのでちょっと分かりづらい)。そうか、色紙に描いた「金魚書」もこの章なんだね。
で、ここに1つ「特別作品」が。上野の森美術館のこの場所でこの展覧会のために作成したインスタレーション「緋照」。写真OK(twitterに載せた大きな金魚の写真)。
…めちゃくちゃパネルからはみ出してるけど、これどうするのかね(遠い目)壁紙に描いた形になってるから、上手く移動できるのかな…。


第3章「遍在する金魚たち1-支持体、形式の探求の探求」
色々なものに描いてる。
「金魚ブリック」は樹脂に、紙に描いた金魚入れて長方形の形をした小型のもの。普通に美術館のグッズでありそう。
Tシャツ、軍手もまあ分かる。売れるし。
布や、段ボールとか、変わった形のパネルに描いてるもの。
屏風(「金魚之間」)。
段ボールが水槽になって、その中で金魚が各方面から描かれている「ダンボール水槽」。
木で作成した「木金」。
机の引き出しで金魚が泳いでるインスタレーション「方舟」。
番傘がひっくり返って、その中に水(樹脂)が讃えられて、そこに金魚が泳いでるインスタレーション「雫」。変わってるけどこれは美しい。
北海道お土産定番(?)熊の木彫りが金魚咥えてる「熊を金魚すくい」。え、ええ…。頭が金魚色に染まってるのとか、熊の背中から尾びれが出てるのとかあるよ…。
個人的におおっと思ったのは、「ハーフ・ユニバース」(これは展示サイトに載ってるけど、この写真だと「本筋」が分からない「ようになってる」ので、気になる方は展覧会で)と、ココナッツサブレの箱に樹脂入れて金魚泳がせた「ココナッツデメサブレ」。
第2章が割とスタンダードで、同じ部屋(「緋照」のある壁が仕切りにはなってるけど)に、なんかよくわからない謎のものが沢山ある感じに。


で、次の部屋は暗く。
その中で何やら怪しく照らされてる桐箪笥。
引き出しやら戸棚の中で金魚が泳いでた。インスタレーション「花嫁さえも」。
義母の花嫁道具だったそうで。…そんな大事なものいいの?って思ったけど、捨てる予定だったものを使ったそうなのでちょっと一安心したり。
更に次の部屋に続く前に、特別出品の「金魚酒」シリーズ4点、こちらは撮影OK(twitterに載せたのは「鈴夏」)。


第4章「遍在する金魚たち2-日常の景色とともに」。
生活用品を元に作品にしたもの関連。
木桶とか匙とかプラスチックのタライとかコーヒーカップとか木の俎板(「真魚」。一部削ってそこに金魚泳がせてた…)とか。
パンダの絵のホーローカップを作品にしたのは「贈り笹パンダ」って作品名だったり、ロボット8ちゃん(と書いて若い人は分かるのか…?)のアルミの弁当箱を作品にしたのは「No.8」だったり。
そのうち、これ使っちゃっていいの?だったのは、古いスニーカー作品の「灰白ノ池」。こういうのって却って高価なんじゃないの?と思ったら、レアスニーカーコレクターの方のスニーカーのようなので、多分高価…。
あと、「発掘されたササン朝ペルシャ時代の陶器」作品の「蒼月」、個人的に「勿体無い!」の声が出た(あ)東京国立博物館の東洋館3室に飾るぞ書き手なら(細かい)。


第5章「2.25D-表面と深さのはざまで」。
まずは、第2章に出てきたような、平面「のような」作品群。板の上に描いているのだが、実は薄く板を削って、そこに樹脂を重ねて描いているそうで。これは…解説されないと気づかないかも。確かに、絵が重なって出来ているのよね…。
もう1つは、拾った、錆びたり踏まれたりでボロボロの空き缶に樹脂を流し込んで描いてる作品群。
試行錯誤だなあ…。
同じコーナーに、映像作品の「メチレンブルーの海」が。こちら、飼っている金魚が病気になった時に、水槽に薬を流し入れてるのをスローで映してる。
そうそう、深堀隆介、自身で金魚飼っていらっしゃる。で、その金魚を時折眺めているそうな。スケッチはせず。唯一スケッチするのは、飼っている金魚が亡くなった時…。それが参考資料「DEATH NOTE」としてこちらのコーナーに展示されていた。丁寧に状況もメモされている。
…なんだろう、結構愛情が深いのかな、とは…。


第6章「新展開-生まれつづける金魚たち」。
描かれているのは金魚…そのものじゃなくて、例えば鱗。抽象画のよう。
「鱗皮」は柿右衛門の器に載っている、鱗つきの皮。
…流石に抽象すぎて、どうとっていいか分からないけども。
ここにはインスタレーヨン「方舟2」も。仕切られた木の枠にそれぞれ色々な金魚が。卵もあるよ。


で、最後の部屋。
壁に描かれている色々な金魚と…なんとも妖しい照明に照らされる、屋台の金魚屋。
インスタレーション「僕の金魚園」。
なんか、屋台の妖しさが不思議な感じだった。写真OK(twitterに載せたのが一部)。


金魚も美しくて、色々不思議なものが多くて面白かった。
なんというかこう、気負わずに行って楽しむのが良い展覧会な気がする。


余談。
展覧会の物販コーナーに、金魚みくじなるものがあった。200円。深堀隆介のイラスト入り。
金魚は中国では「金余」(お金が余る)と同じ音になるので、縁起が良いのだとか。
洒落で引いてみたら、凄い大きな音が出て、結構恥ずかしい…。やってみたい方は身構えてほしい。
ちなみに中吉。ぼちぼちです。


続く。